Apr.2012


雨はともかく霧がひどいのです。ボクは若いころに自慢の未対策2TGセリカLBで国道141号線を走行中,霧のために視界が数メートルもなくなって,とうとう耕運機に右側から追い越されたという苦い経験を持っています。あのときほどではないにしろ,慣れない外国の山道で霧と雨の中を走り続ける意味がありません。予定を変更して,真っ直ぐにパンプローナの町に下りることにしました。

オプションで借りているナビは,GPSとインターネット機能を搭載したタブレット端末型です。言語を選べるのはいいのですが,英語を選択すると距離をマイルで案内するのには閉口しました。ヨーロッパの標識はきちんとメートル法なのです。

「400ヤード先,道なりに右です。」

…と,言われてもなかなかピンと来るものではありません。だからと言ってちんぷんかんぷんのスペイン語やフランス語に設定するわけにもいきません。ヨーロッパには「ラウンドアバウト」と呼ばれる円形交差点が多くて,単純な右左折直進にならない場合がほとんどだからです。

「ランナバウトに入ったら3番目の出口です。」

音声のお姉さんに言われた通り数えて3番目を出るとただの直進方向だったりします。何しろ走って来た道が1番目(first)です。慣れるまで何度間違えたことか。ヤードにガロンにポンド…アメリカはいったいいつまで意地を張るのでしょう。今朝は40度まで下がって真冬並みの寒さとか天気予報で言われても,分かるのはキミだちだけです。

目的地の設定がこれまた多機能だけにすぐには使いこなせません。どうしてこんな複雑な操作を必要とするナビをレンタカーに使うのか不思議です。とっくにメインナビの座をドレミに奪われて,ただの現在位置表示装置に成り下がっているのですが,新しい町に入るときには設定する必要があります。一方通行や右左折のルールなど,地図からは分からない交通環境があるからです。唯一マスターした目的地設定方法は,シンプルに地図をスクロールして目的地をズームアップしていき,地名をタップして設定画面を開く方法です。急に予定を変えたためにパンプローナのどこに行くかまだ決めていませんでした。

「さら…さー,…中心街にサラサーテ通りっていうのがあるぞ。チゴイネルワイゼンと関係あるのかな。」
「サラサーテはスペインの人よ。そこに行きたい!」

霧の峠のパーキングでナビを操作しながらあっさり目的地が決まりました。

↓かくしてやって来ました。サラサーテ通りです。


雨もやんできました。

町歩きにはおあつらえ向きの天気です。


この町はもともと立ち寄る予定ではなかったので何も知りません。サラサーテゆかりの場所を訪ねることにしました。どこかな。


城壁に沿って進みます。


これを撮っているボクの位置からはもうすでに銅像が見えているのですが,入念に道を教えてくれる町の人。


バイオリンをすなるドレミ,チゴイネルワイゼンはオハコのひとつです。サラサーテはバスク人だったんですね。初めて知りました。銅像の前でおすましして記念撮影を促してます。

おすましではつまらないので,ムチャなポーズを強要されています。照れています。


準備中のバール(居酒屋)を物色しながら中心街に戻ります。

「ねえ,決めた。夕食はここにする。いいでしょ?」
「いいけど,さっきから「決めた」って言う店がこれでもう4軒目だぞ。」
「あー!!決められない。どうしよう。ねえ,どうしたらいい?」

「うーん!!やっぱりここに決めた!いい?」
「いいよ,ここにしよう。」

…どうせ次の角を曲がればまた,違う店になるのです。

「それよりまず,ホテルを探さなきゃ。宿無じゃあ飲みには行けないよ。」

大通りの四つ星,五つ星ホテルは予算オーバーだったので,ひとつ裏の通りに入りました。高級車が並んでいます。

ううー,ここも三つ星だけど高そう。ドレミは臆することなくぴょんぴょんと階段を昇り,フロントに行って値段を聞いてます。あれ?ウインドウの奥から「丸!」のサインを出してます。どうやら交渉成立のようです。


ナマズをホテルの駐車場に停めるのにけっこう苦労しました。すぐ見えるところだったのに,一方通行に苦しんで狭い路地をくるくる回りさせられた上,古式蒼然たる石畳の駐車場は,例によって地下牢のように出入り口が狭かったからです。


「あー,疲れた。」

ベッドにごろんた。でもこれで夜の町にぱーっと繰り出せます。

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