Aug.2015

1. フランクフルト中央駅



夏休みの日程が少し長く取れそうなことが分かったのは前年の9月。お盆休みの航空券は割高なので、貯まっていたマイルを使えないだろうかと友人に相談してみた。すでに予約受付開始の330日前を過ぎてしまっていた。

「フランクフルト便ならまだ取れますよ。」



聞いてみてよかった。彼は飛行機マニアである。空の旅はもちろん,成田空港の撮影ポイントから特典航空券のことまで何でも詳しい。まさか受付日をずっと過ぎて,夏休みのしかも人気路線の特典航空券が取れるとは思わなかった。飛行機の行き先はこうして決まった。


それからレンタカーを予約した。借りるスポットによってずいぶんと値段が違う。空港より市の中心部,さらに郊外なら1万円は安い。飛行機が着くのは夕方なので,中央駅のそばにホテルを予約し,翌日の午後に郊外でレンタカーを借りることにした。出発前に決めたのはそれだけだ。あとは訪ねる場所すら決めていない。



空港に着くと,ドレミがドイツのガイドブックを取り出し,切符の買い方を確認する。

「任せといてよ。飛行機の中で読んどいたんだから。」
「頼りにしてるよ。」



ボクたちは旅慣れてはいるが,例えばドイツの鉄道に慣れているわけではない。言葉の分からない国で,切符を買う,道を見つける,何か買う…その一つ一つが大仕事になる。ボクたちにとって旅はバカンスではない。気力と知力とチームワークを試す冒険である。



さっそく販売機でフランクフルト行の切符を買うのに,もう2本の電車を見送った。ツアー旅行のように要領よくいろいろな場所には行けない。その代わり一つ一つの体験は鼻の奥がきな臭くなるほど強烈に刺激的だ。そして切符を買えただけで,ハイタッチして讃えあうほどの達成感が味わえる。



「次は終点 フランクフルト中央駅です。」

車内放送を聞いてほっとする。

ほーら,この電車で合ってた。えっへん。ドイツ語がわかったわけではない。英語でも放送が入ったのだ。


ぐーてんたーく!!シュウです。

旅行前々日は夫婦二人とも夜明け前に事務所の床に寝袋を敷いて仮眠した。この日の朝は徹夜でなんとか仕事を終わらせ、一睡もしないまま羽田を発って来た。眠い。

EOS 5D MarkⅡ+ EF24mm f/1.4L USM


デーテおばさんに連れられたハイジが汽車から下りたフランクフルト中央駅。その頃の面影を残すこの駅から旅が始まる。

ん?ドレミはどこに行ったかな。

いたいた。さっそくチョコクロワッサンを買ってる。

EOS 5D MarkⅡ+ EF24mm f/1.4L USM


さて,ボクたちをどんな出会いと冒険が待っているのだろう。

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