Aug.2015

13. SKIPPED BEAT


「KUWATA BAND」1986年のヒット曲「スキップ・ビート」…

腰を絡め すんげェ! 
Skipped Beat, Skipped Beat
Skipped Beat, Skipped Beat♪

曲名にもなっている「Skipped Beat」が誰の耳にも「スケベ!」に聞こえる。それもそのはず,英語に「Skipped Beat」などという言葉はなく,「スケベ!スケベ!」と連呼するために桑田さんが作った造語だというから驚く。他にも全編あまりに卑猥な歌詞なので,ふつうはとても口ずさんだりすることはできない。

オランダの高速を制限速度140kmいっぱいで西に走りながら,ついこの歌を歌ってしまって一人赤面する。しかもサビしか知らないので「スケベ!」をリフレインしてしまう。それを聞かれなかっただろうかと横目で助手席を窺い,妻の寝息に安堵する。

なぜ「Skipped Beat」を口ずさんでしまうのかと言うと,「スヘフェニンゲン(Scheveningen)はとても発音が難しいので,むしろ『スケベニンゲン』と言った方がオランダ語の発音に近くて通じ易い」などと,どう見ても眉唾もののことがガイドブックに書いてあったからだ。

素人でも分かるが,スケベは全くオランダ語の発音には似ていないと思う(笑)オランダ人は観光客が単語を英語読みするのに寛容だと聞く。「スケヴェニンゲン」ならかろうじて通じるのかもしれない。街頭で道を聞くとき,ガイドブックを見ながら日本人が「スケベニンゲン」と連呼する姿もぞっとしない。

Skipped Beat, Skipped Beat♪

おっと,また口ずさんでしまった。「Skipped Beat」は完ぺきに「スケベ」である。ボクにやましい心のないでもない(笑)高速の終点デン・ハーグが近づいてきた。

スヘフェニンゲン


車で新しい国に入ったときは,標識や独特の交通マナーを探るため,高速を郊外の町で下りて慣らした方がいい。が,今日は少々急いでいるので,いきなり大都市のど真ん中に突入である。やましき心の赴くまま(笑),苦手な路面電車も何のその,中心街を突破して,海沿いのリゾートビーチに向かう。

スヘフェニンゲンは田舎のラスヴェガスという印象の町だった。リゾートホテルやカジノが建ち並び,ショッピングモールがどこまでも続く。たいへんな交通量と路駐である。もっとも路駐は合法らしく,駐車スペースを探す車も多い。ナビの示す観光案内所に到着した。いつもなら,妻を走らせるところだが,まさか

「ヌーディストビーチに行くにはどこに車を停めたらいいでしょうか。」

…なんて聞かせるわけにもゆくまい。と,思ったところが,ドレミには全くもって屈託がない。

「聞いて来るね」

そう言うなり車を降りて走って行った。だが,その案内所はインフォメーションと言うより,どう見てもショッピングモールのサービスカウンターにしか見えない。案の定,誰ひとりとして単語以上の英語を解さなかったらしい。その上,どうやら妻の興味がビーチよりそのモールにある珍しいショップの数々に移りつつある。

こ,これはいかん!

海よりショッピングしよう!などということになったらタイヘンである。もはや猶予ならず。自分の才覚でアプローチするしかない。

市内には公共の立体駐車場があるはずだが,この様子では駐車待ちの列ができていることだろう。よしんばそれを待って,うまく駐車したとして,そこから目的のビーチまで歩けるのだろうか。ボクはWi-Fiで公式サイトからスマホにダウンロードした地図と,グーグルマップ,それにナビの地図を見比べて考えた。

ヌーディストエリアは,およそ湘南海岸全域ほどもある大規模なビーチの南北の端に設定されている。現在地の中心街から近いのは北端の方だ。それに賑やかでリゾートムードもありそうだ。だが,不慣れな外国人がこの付近で駐車場をゲットするにはかなりの時間を覚悟せねばなるまい。

よし!南に賭けよう!!(笑)

3つの地図を駆使しながら,いったん一般道に戻り,最も南のビーチにアプローチする。路駐の状況は変わらないが,そろそろ夕方である。ビーチを後にする人たちと,仕事が終わってアフター5にやって来る車が入れ替えの時間になってきた。帰りそうな車を見つけて声をかけ,首尾よく南端に近い駐車スペースを確保した。

車で水着に着替えた。日除けはないので,代わりにバスタオルをたくさんかぶって,浜に向かう人の流れについて行った。海外できまま旅をするときは水着とビーチサンダル,それに大きなバスタオルは必需品である。ビーチや温泉施設はもちろんのこと,泊まったホテルに魅力的なプールやジャグジーがついていることもあるからだ。


まだ4時過ぎなのに,明らかに仕事帰りらしい地元ナンバーの車が多い。


防風林を抜けてゆく。


ビーチの入口にイラスト地図入りの案内板が立っていた。犬オッケーのマーク,海の家やトイレの場所,監視所に救護施設…そして端のビーチにだけ凡例にないマーク。間違いない。あそこだ。

いざ,行かん。ヨーロッパのリゾートビーチ体験!!


EOS 5D MarkⅡ+ EF24mm f/1.4L USM


浜に下りてすぐ,寄ってきた犬をついついあやしたために,飼い主のおじさんにつかまってしまった。ボクらと同じく,完全に犬にいかれてしまっている。

「ウチのボブと一緒に記念写真撮るかい。」

いやいや,全く以てノーサンキュー,ご辞退申し上げ…そ,そうですか?じゃ。


はい,チーズ。

おじさんに愛想笑いしながらも,ボクの目は遠くにある看板を捕えていた。


じゃじゃーん。

この看板から向こうがヌーディストエリアだ。



看板は「この先にはナチュリスト(ヌーディスト)がいますので驚かないでね」と,告知するのが目的で,ヌーディスト以外が入っても全く問題はない。実際,波打ち際は水着どころかウエットスーツを着込んだカイトサーファーに占拠されていた。

一方ドレミはさっきから全く別の方角に興味を引かれている。

「あー,あそこの海の家,オシャレね。行ってみたいな。飲み物頼んだら高いのかな。」

…いや,まて,ビーチ探訪が先だろ。お前,全然興味ないの?

「?…うん」

あちゃー(^_^;)…そりゃそうだ(笑)

だが,一人でヌーディストエリアを歩くのはちとためらわれる。カップルで波打ち際を歩いているうちに,うっかり迷い込んでしまった風を装いたいのが人情である。あとで海の家に行って,高くても飲み物注文オッケーを交換条件に一緒に浜散歩の同意を取りつけた。

こうして迷い込んだ(笑)エリアには当然のことながら裸の老若男女がごろごろと寝転んでいた。…が,全く違和感はない。Skipped Beat感もない。ただ人々が裸で日光浴している。後ろから自転車をひいてきたほっぺにそばかすの若い女の子が,目の前でくるくると着ているものを全部脱いだ。タオルを敷いて仰向けに寝転び,文庫本を開く。テントの前にチェアーを並べている初老の夫婦がボクたちに手を振った。どっから来たの?ええ?ヤーパン?あなた,シャッターを押してあげたら…とか,ふつうのお人好し夫婦である。ただ,まっ裸である。


そのまま波打ち際を,普通?のエリアに戻ったが,本当に海で泳ぐ人の姿はほとんどない。北海は真夏でも水温が低く,海水浴には向かないらしい。

オシャレな海の家で,いかほどするのだろうかと恐る恐るビールとアイスコーヒーを注文してみた。…驚くほど安かった。特にビールはスーパーで売っているのとほとんど変わらない。

EOS 5D MarkⅡ+ EF24mm f/1.4L USM

EOS 5D MarkⅡ+ EF24mm f/1.4L USM

いぇーい♪

…隣の席のおばさんに写真を頼んだら,ポジションを変えながら20枚近くも激写してくれた。


何だか古き良きヨーロッパ映画の中に入ったような気分だ。

EOS 5D MarkⅡ+ EF24mm f/1.4L USM


車まで戻ってきた。砂はさらさらしていて,タオルで簡単に落ちた。これなら,シャワーを探さなくても宿まで行けそうだ。

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