Aug.2015
15. 瑠璃色浪漫
運河の街に夜の帳が下りる。
この広場にフェルメールのお墓があるらしいのだが,真っ暗なので探すのはあきらめた。中央にいらしたマリア様の像を拝んで,巨匠によろしくと伝えた。
17世紀前半,オランダは繁栄の絶頂にあった。デルフトの街も活況を極め,世界中の物産が運河を行き来したことであろう。
フェルメールが多用したため,フェルメールブルーとも言われるウルトラマリンは,ラピスラズリ(瑠璃)という宝石を顔料として使っていた。当時,アフガニスタンでしか採れなかったラピスラズリは金よりも高価だったという。あまりに美しいために「天空の破片」とも呼ばれた。
ボクの絵具箱にも「ウルトラマリン」は常備しているが,今は科学の進歩で顔料は合成できるようになっていて高価ではない。
この付近にもフェルメールゆかりの建物が多く残っている。ドレミがガイドブックの地図をくるくる回して,ボクのために懸命にどの建物か特定しようとしてくれている。けれど,酔いが加速していたボクは,その健気さが妙に愛おしくなって,そのまま舗道で彼女を抱き寄せてしまったから,結局,どの建物か分からず仕舞いになった。たぶん,↓この中のどれかである。
街中を巡る運河のためか,何だか夜が青い。ボクはすっかりフェルメールブルーに酔ってしまったようだ。
今宵,瑠璃色浪漫。