あたりがすっかり暗くなった頃,鶴居村に入ってびっくり.
あれ?
100羽近いタンチョウの群です.
かつて,野鳥に詳しい鶴居村の農夫が,絶滅したと思われていたタンチョウを偶然自分の畑で見つけて餌を与えました.やがて賛同した村人たちも倉庫の穀物を撒きました.それは彼らにとって大事な越冬の食糧でした.鶴居村のタンチョウは村人たちが自分たちの食糧を分け与えて絶滅から救ったのです.
それが今では空港の名前にまでなり,世界中からネイチャーフォトグラファーが集まってきます.雪上でラブダンスするツルと温泉に浸かるサルは日本でしか撮れないそうです.阿寒町ではツル人気にあやかろうと肉や魚を撒いて,オオワシとタンチョウがエサを争う様子を売り物にしています.一時,鳥インフルエンザの流行で自粛していた鶴居の餌付けも,どうやら負けじと今年あたりはまた規模が大きくなってきているようです.
一組の夫婦がなき交わしを始めました.オスがくわぁー,メスが応えてくぁっくぁっ.三拍子,ワルツのリズムです.いったん離れて,向かい合い,踊りながら近づきます.すれ違いざまに美しく体を反らせながらひときわ高く鳴きます.一度雪上でそのシーンを見てしまったら,もう病みつき,きっとタンチョウの魅力にはまってしまいますよ.
シーズンになると,餌付け時間にはそれぞれの場所に百人近いカメラマンが並びます.他でも鶴居村中,思い思いの場所にカメラマンが散って鳥を待っています.ツル撮りポイントを回るタクシーもあります.一般客を乗せた観光バスは鶴見台と呼ばれる国道脇の餌付け場所にひっきりなしにやってきます.音羽橋から雪裡川にあるタンチョウの巣を夜明けに狙うなら,真夜中3時過ぎには場所取りしないと三脚は立てられません.
いやはや鳥撮り狂想曲.
根室の民宿の老主人にシマフクロウの情報をくれたホテルでは,その後シマフクロウの餌付けに成功したそうです.
「養老あたり何軒かあった温泉ホテルで,あそこ1軒だけバブルのあとも潰れずに残ったのはシマフクロウのおかげだぁーっはっは.」
…と,老主人.今でも冬場になるとフクロウを撮りに来るマニアで連日満室なのだそうです.湿原のカメラマンたちでもシマフクロウの撮影ポイントだけは決して人に教えません.それぐらい難しい獲物です.それが素人にも労せずして撮れるとなると,ボクでもちょっと心が動くほどです.
日本の渡り鳥越冬率は周辺国に比べて格段に高いそうです.それは各地で観光目当てに餌付けされるからです.鶴居からタンチョウがいなくなったら,観光は成り立たないでしょう.
鳥よ,鳥よ,鳥たちよ~♪
…でも,鳥に罪はありません.餌のあるところに集まって来るだけです.これが今回,7Dのラストショット.オリジナルは真っ黒からのレタッチです.ま,ほとんど絵ですね(笑)毛が茶色っぽいのは今年産まれた幼鳥です,かわいいでしょ.
釧路市内で厚岸の牡蠣を出している回転寿し屋さんに行きました.ドレミのご機嫌取りです(笑)さらに空港のお土産さんをはしごして,ロ○ズの北海道限定チョコで持参したチョコ専用袋(画面右手の黒いヤツです)をいっぱいにしたドレミ,これですっかりご満悦,なんて安上がりなんだ.
さて「逢いたくて」はこれにておしまい.ご精読ありがとうございました.
ボクは写真ばっかり撮ってる絵描きですが,どうやら駄文を綴ることは絵よりも写真よりも好きなようです.今回も写真にキャプションをつけるだけのつもりが,いつの間にやら長編旅行記になってしまいました.