02/栄浦第二遺跡

Aug, 2007

サロマ湖の東に広がる栄浦は国道が通っていますが,観光客が立ち寄ることはまずないでしょう。森を取り囲むように採石場が稼働していて,ひっきりなしに出入りするダンプカーの巻き上げる砂埃が,道路脇の木々に白く積もっています。おそらく,文化財保護区の指定が解除されれば一週間で森は消えるかもしれません。

注意深く探していたボクたちも細い棒に書かれた入り口の標識を一瞬見逃してUターンしました。が,駐車するスペースがありません。車を降りて道路の真ん中に出てみましたが見渡す限りの直線道路には駐車場の標識どころか車を寄せられる場所すらありません。

「仕方ない,ここに止めよう。」

入り口はすぐに山道になっていて,車止めギリギリまで入れば何とか一台は駐車することができます。

「あとから誰か来たら困らないかしら」

「たぶん,一週間に一台も来ないと思うよ。」

藪の中にようやく標柱を見つけました。

ドレミがスカートの中にまで虫除けスプレーをしています。ボクの足とタローのお腹にもたっぷり,歩道くらいは整備されているかと思ったのが甘かったようです。


道はいきなり鬱蒼とした森に分け入りました。ローラアシュレイのサマードレスで登るのはかなり場違いの感が否めません。タローだけが嬉々として前を行きます。道が少し開けて平らになりました。遺跡はどこだろうかと汗を拭きながら周りを見渡したボクは,びっくりして鋭くタローを呼び寄せリードにつなぎました。ドレミも思わず声を上げます。

あたり一面の樹間が円形の窪地になっていました。栄浦第二遺跡の真ん中にボクたちは立っているのでした。オホーツク人の住居跡たる窪地は数え切れないほど遠くまで続いています。初めてこれを発見した人の感動はいかばかりだったことでしょう。それにしても,せめて小さな案内板はないのでしょうか。知らない人が迷い込んだら,格好のゴミ捨て場かと思うかも知れません。

 

←ありました。
上からペンキが塗られて,一度は民宿の看板になったようです。

中心を外れたあたりまで歩いてみると小さなサイズの縦穴住居跡が集まっています。

「きっとこのへんは若い夫婦の家だったのね。」

「ウチは若くないけどこれでいいかな。」

「ダメよ,タローがいるんだからこっちの一回り大きい家にしましょ。」

そう言ってドレミが指差す窪みの前でタローが座っていました。

 

オホーツク人の住居跡

 

「ん,ここにしよう。見晴らしもいい。」


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