13/北に暮らすこと

Aug, 2009

ばぶるさん夫妻に会ったら聞きたいことがたくさんあった。

ばぶるさんは,2年ほど前にボクのブログにコメントを書いてくれた。それ以来のweb友だ。オンラインの交流を続けるうち,彼らが10年前に大阪から美幌に移住したことを知った。

ボクたちは,美幌のばぶるさんちを目指して北見国道を走っている。今夜はお泊まりさせてもらっての初オフ会である。

10年前と言えば,ボクとドレミも大きな転機にあった。不妊治療を中止し,教室をスタッフに譲り,ドレミを留学させた。生活をリセットしたボクたちには,その時点で,ある意味あらゆる可能性を選ぶことができた。が,結局,拠点を下町に移して再び教室を開くことにした。二人とも今の仕事が好きだったのだ。

同じ頃,ばぶるさんたちは安定した都会の職を捨てて北海道に渡った。ボクたちの仕事も彼らの北海道生活も0からのスタートだった。それからの10年,苦しいときも人には笑顔を見せてきた。自分で選んだ好き勝手な道ゆえの意地があった。そして夫婦二人だから乗り越えられた。おそらく互いに相手のそんな来し方を感じて親近感もひとしおなのだろうと思う。

なぜ北海道に?ご両親は?お子さんは?仕事は?

美幌の町が近づくにつれて,親しくともメールでは聞けなかったそれらの質問が,まるで整然とした麦畑の畝のようにボクの頭の中で箇条書きになっていた。

国道沿いの小道を入ると,写真で見慣れた庭に奥さんのユキちゃんの姿が見えた。ボクたちのために午後の仕事を休んでバーベキューの支度をしてくれているのだ。

犬のクマは最初こそ「なぜこの人たちはワタシを知っているのだろう。」という顔できょとんとしていたが,もみくちゃに撫でられて,とりあえず疑問は飛んでしまったらしい。鞠のように跳ねて歓迎してくれた。タローともすぐに仲良くなった。

ほどなくばぶるさんが車で帰宅して,ボクらは初めましての挨拶を交わした。

 

 

 

←専用に焼いてもらった肉を平等に分けているところ。

家のある集落のまわりにはビート畑が広がる。国道を隔てた防風林の樹間に夕日が沈む。

なんと心地よい庭だろう。

ボクの頭に箇条書きされた質問の答えは,聞かなくてもみんなこの庭にあるような気がした。

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