時期が悪かったのかメルヘンの丘の畑は草ぼうぼうでしましまもない。
仕方ないので,いつもならカメラマンでにぎわっている正面の階段にドレミとタローを座らせてフレーミングしていると…
猛スピードで駐車帯に入ってきたRV車から,一眼レフを持った男女が一直線に走ってきた。
「わちゃちゃちゃ,やっぱりここは人気あるなあ。」
場所を譲ろうと,ドレミとタローをせきたてて車に戻ると,カメラマンが今度は車に向かってくる。正面に車を停めていては迷惑なのかと思い,移動させるために運転席に座ると,女の人が車の前に回りこんだ。
「はあはあ…,いえ,女性と犬があまりにもいい雰囲気だったので…」
あえぎながら言う。男も追いついてきた。夫婦揃ってカメラが趣味で,今は撮影旅行中だと説明した。走っている車からタローとドレミを見つけ,二人同時にシャッターチャンスだと思ったそうだ。
「あはは,ご冗談を。何ならもう一度座らせましょうか…なんてね。」
「お願いできますか!!」
「へ?」
本気(マジ)ですかと聞く間もなく,二人はカメラの設定を始めた。
「はい,そこに座って」
トゥトゥトゥトゥトゥトゥ!!!
「今度は下を歩いてー」
トゥトゥトゥトゥトゥトゥ!!!
驚いたことに二人とも1Dsだ。シャッター音が違う。撮られ慣れているドレミですら,あまりの連写に笑い出してしまった。あっと言う間に二人とも100枚ほど切っていた。ウチのなんちゃってモデルをわざわざ撮りたいなんて,世の中には変わった人もいるものだ。