あれから4カ月,聞こえてくるのは,大型液晶テレビを買ったとか金髪にしたとか,ろくな噂ではない。またぞろ怠惰な生活をしているのではないだろうか。
前置きがやたらに長くなってしまったが,実はつばさの様子を見にくることが,網走行の大きな目的なのである。場合によっては,愛の鉄拳も辞さない覚悟である。
網走港から真っ直ぐに坂を上り詰めると,いわば山の手の新しい町に出た。道路も広く,コンビニやスーパー,家電店などのチェーン店も集まっている。網走にこんな地区があるとは今まで知らなかった。
つばさのアパートは気に食わないことにこじゃれたワンルームマンションの最上階だった。道案内していた携帯を耳にベランダから涼しげに手を振っている。
「ばっかやろ!すぐ迎えに降りて来い!」
「うへーい」
ご両親に頼まれた夏掛け布団を担がせて4Fに上がった。エレベーターがついていたら蹴りを入れるつもりだったがさすがになかった。
「先生,オレ,けっこうキレイにしてるっしょ。」
確かに清潔にしているし,きちんと生活している様子が部屋のあちこちに感じられる。それより驚いたことは,つばさが東京にいたときとは別人のように逞しくしっかりしていることだった。
男子,三日会わざれば剥目してナンとやらと言うが,たった4カ月でこうも変わるものだろうか。