31/オホーツクの線路

Aug, 2009

ランプの宿を朝ゆっくりと出て海岸線を東に走る。

 

←網走駅…ランプ滞在中のタロ散コースにて


オホーツク海がきらきらと誘う。誰もいない砂浜に車を入れた。先に波打ち際まで走ったタローが足踏みしながら許可を待っている。

「OK!」

たちまち海に飛び込むタロー。サンダルに履き替えていっしょにはしゃぐドレミ。ボクも砂浜に下りたかったが

「ちょっと行ってくる。」

とドレミに声をかけて画材を担いだ。

浜に下る途中の踏切から見た景色が心を捉えていた。大きな弧を描いて続く砂浜と線路,その向こうに斜里岳の端正な姿が横たわる。線路脇の草むらに簡易椅子を置いてそれらを構図した。

10分もすると,防虫スプレーをものともせずに巨大な蚊が襲ってくる。たまらずに車から蚊取り線香を持って戻ったとき,うっかり草むらに転がった4Bの鉛筆を踏んずけてしまった。写生のとき,筆圧の弱いボクは,柔らかい鉛筆が不可欠なのに,4B,2B,B,HBをそれぞれ一本ずつしか持って来なかった。少しでも軽くシンプルな道具立てにしようと思って,わざわざ鉛筆のいっぱい入った筆入れを置いて来てしまったのだ。真っ二つに折れた4Bをホルダーに差して削ってみたが,芯がバラバラに折れていて使いものにならない。ここからは2Bを主力にがんばってぐいぐい描かねばならない。

逆光と巨大蚊に苦しみながら,ようやく色を置き始めた頃,浜からドレミとタローが迎えに来た。

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