46/第三祭典区

Aug, 2009

勇壮な神輿入りをボクは夢中で撮影した。高田屋嘉平衛のことは忘れていた。ただ素朴な祭の雰囲気に魅せられていた。

 

←神輿の重量1.5トン。100人を超える男たちが交代で担ぐ


参道脇の樹間を駆け上り,何度も神輿の前に回り込んではシャッターを切った。

拝殿前の石畳で,担ぎ手たちが最後の雄叫びを上げる。ボクは5DMK2のシャッターが下りなくなるまで連写をかけた。鬼の形相で担ぎ,叫んでいた男たちの表情が急速に和ぎ,本宮還御が終わった。

ボクは雑踏をかいくぐって,ドレミとタローの待つ参道に急いだ。かれこれ,3時間近くも待たせている。

さぞや退屈しているだろうと思いきや,目指す参道脇には人垣ができていた。社で神輿還御の儀式が行われている間,後続の行列がずらりと止まって休息している。タローを囲んでいるのはお囃子の若衆たちであった。

カメラを向けると,次々と集まってくる若者たち。

「写真,送りますよ。ご住所教えてください。」

と,言うとリーダーらしき青年が名刺をくれた。「第三祭典区幹事長」とある。

山車は「暫」,謡は神田囃子。

金刀比羅祭りの花形,第三祭典区とは彼らである。

やがて行列が動き出す。イマドキだった若者たちが法被姿も凛々しく,緊張した面もちで鳥居をくぐって行く。ボクは軽い嫉妬を感じながらそれを見送った。彼らは仲間と自然な信仰心,そしてふるさとと呼べる町を持っている。

 

 

根室をあとにして西に向かった。釧路で深夜10時半に約束がある。

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