54/二風谷

Aug, 2009

道の駅樹海ロード日高はツーリストには馴染みの交通要衝である。西は千歳,札幌,北は富良野,旭川,東は十勝,帯広に通じる国道の十字路になっている。どちらからも深い森を来ることになるので,休憩に立ち寄る人も多い。

ボクたちも少し休んでから,雨模様の交差点を南に向かった。太平洋に下って,道央自動車道にアクセスするつもりだ。

途中,二風谷がある。

これまでにも何度か通りながら立ち寄らずにいた。アイヌの文化に興味はあるので,北海道旅行を計画するたびに関連の本を読み漁るのだが,まだいい文献にめぐり合わないからだ。偶然,今日は雨の移動日に通ったので,これを機に資料館に行ってみた。

 

狩猟民族であるから一般の民族資料館とは趣が異なる。生活様式は農耕民族のそれではない。実用の道具類などは,昨年,オクラホマ州に訪ねたチェロキー族(ネイティブアメリカン)に似ている。

最初の人類はアフリカ大陸で生まれたと言われている。欧州を横断し,北アジアの寒帯気候に適応しながら派生したモンゴロイド系の狩猟民族は,南下して東アジア各地に広がり,あるいはシベリアから北アメリカを縦断する長い旅を経て南米にまで達し,高い文明を誇ったたと思われる。アジアでは農耕民族に,そして南北アメリカでは欧州からの移民によって,まるですり潰されるように抹殺された彼らの足跡が系統的に解明される日は来るのだろうか。

とりわけ,地球上で最も自然豊かであったろう極東の島国で生を謳歌した蝦夷人たちの歴史は研究されなければならない。それはグレートジャーニーと名付けられた人類最初の旅のおそらく典型的な到達点だったに違いないのだ。

ドレミは彼女らしくユーカラの曲調に興味を持った。展示室の中央にAVコーナーがあって,採録されたユーカラを聴くことができる。モニターには二風谷の美しい映像が流れる。詩の内容に比べ,素朴で穏やかな音楽である。それは豊かな暮らしをしていた民族独特の安らかさであろうか。

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