太平洋岸に出て高速に入ると雨も止み,室蘭を過ぎて北西に向かう頃には,行く手の雲が激しく流れて,有珠山の赤い山肌が姿を見せた。
SAに停まって待つほどに,雲が上り,昭和新山を従えた有珠山が全容を現わす。エリアの庭園に降りて,色とりどりに咲く紫陽花畑の脇に画材を広げた。
ドレミはタローと施設内のドッグランで遊んでから,海側のベンチに座って「菜の花の沖」の最終巻を読みふける。涼しい風が髪をなぶる。
こんな気持ちのよい庭に誰も下りては来ない。皆,階段の上から見下ろしただけで,すぐに車に戻ってしまう。
やがて急速に山が色を失って,風が冷たくなった。再び高速道路を走り出すと,行く手の空が夕焼けした。
函館に着いて銭湯に浸かり,名物のハンバーガーで夕食を済ませると,タローもドレミも夢の中。
ボクはひとりハンドルを握り,尚も南下する。
函館湾に烏賊を追う漁り火が美しい。