Aug.8th, 2018
10.ザルツブルク
音楽祭
ザルツブルクは折しも夏の音楽祭のさなか。
「町中至る所で毎晩コンサートが開かれるの。ヨーロッパ中,世界中から人が集まってくるのよ。」
1月にボクがスーパー観光地のザルツブルクを決意したとき大喜びしたドレミが言った。
「どのコンサートに行こうかな。迷っちゃうな。」
い,いやちょっと待っ…
今さら音楽祭までは想定外だったからやめたとはとても言えない。しかし雑踏がウルトラ苦手なボクがそんなところに足を踏み入れて果たして生きて帰れるものだろうか。
そうこうするうち半年以上前なのに人気のコンサートや宿が次々と予約で埋まっていく。もはや一刻の猶予も許されない。ボクは覚悟を決めた。ドレミは残っているコンサートの中からいちばん好きなものを選んでチケットを購入し,それに合わせてリーズナブルな宿を予約した。
1月にドレミが見つけた宿はその名もホテル ALL YOU NEED 。
音楽祭の期間だけ営業するという実利主義も徹底している。家具や設備は徹底的にシンプルだが朝食付きでひろびろとした部屋。
中心街にもかかわらず敷地内にゆったりとした屋根付き駐車場がある。
コンサートと「サウンド オブ ミュージック」のロケ地巡りのための戦うベースキャンプとすれば,まさにボクたちのNEEDS にぴったりである。
荷をほどくとさっそく町に繰り出す。
「効率よく回らないと全部回り切れないのよ。」
ガイドブックの地図を回しながら先に立つ。
ドレミは1月以来地図上で何度この道を歩いたことだろう。タローが恋しい休日に。薬を飲んでも眠れない夜に…。
最初に訪れたのはホテルからほど近いここ。
モーツァルトの住居
モーツァルトの住居跡が記念館になって公開されている。
町にある公共の乗り物や入場券が24時間フリーになる便利な「ザルツブルクカード」をホテルで購入してあった。ここで最初に使った瞬間から24時間のカウントがスタートする。
明日の夕方まで分刻みでドレミの予定表が準備されている。
ボクなど門外漢にとってモーツァルトの家は間違えて入ったのかと思うほどボンのベートーベンハウスにそっくりだ。撮影も同じく禁止になっているので退屈極まりない。もちろん展示してある楽譜や楽器は違うのでクラシック好きな人には当然わかる。熱心にひとつひとつ見ている。日本人団体ツアーもガイドの説明付きで回っている。
撮影可能エリア…なんだこれ(笑)
ドレミは身長163cm
めまいがすると言っている。あんなに気合い入れて見物するからだ。
カタカナのモーツァルトはあるがハングルや繁体中国語版はない。お土産売り場には日本がアジアの盟主だった時代の名残がある。
中庭…やっぱりベートーベンハウスに似ている(笑)
↓
ベートーベンハウス(ペン+PCソフト)
旧市街へ
どこまでも続く謎の大階段。登って確かめたわけではない。撮影用登ったふり(笑)ひっきりなしに通る人波の切れる一瞬を狙うなどボクらのチームワークには容易い。
ザルツァッハ川越しに丘の上にそびえるホーエンザルツブルク城を臨む。
川を渡って旧市街へ。
さすが音楽祭只中,おびただしい観光客,くわばらくわばら…逃げようがない。どこで始まったのか,恋人と二人で観光地に南京錠をかけると結ばれるという流行。
昔,相々傘,今,南京錠。くわばらくわばら(笑)
馬車の後ろには鮮やかにお馬さんの落とし物を回収してゆくアルバイト青年がいる。
「この店撮って!!」
ハイハイ(;^_^A
モーツァルトがひいきにしていたカフェ「トマセッリ」
「シュウはここで座って待ってて。調べてくる。」
ここはザルツブルク祝祭大劇場。オペラのチケットは高すぎて手が出なかった。
「やったー!!あったあった!」
ドレミが確かめに来たのは劇場見学ツアーの予定表。見物するだけでも7€(910円)からする。中に何があるのかは明日のお楽しみ。
大急ぎで新市街に戻り,ドレミのチェックしてあったレストランに出向くと,さすが音楽祭期間だけあって満席。だがノープロブレム。チェックリストには第2候補,第3候補が控えている。
夜景
第2候補も満席だったが粘るとカウンター席を空けてくれた。ビールの醸造所が直営しているレストランだった。
常連客に囲まれてもちろんビールはこの醸造所。目の前にディスペンサーが並んでいる。
自家製ローストポーク。
ぱさぱさのチャーシュー。東京のラーメン屋で出してたら店がつぶれる。
ガイドブックに載っていた1号店の看板メニューの写真を見せると同じものを持ってきた。ソルティなキノコソテーで和えたジャーマンポテトだった。
玉葱サラダ。
ビールは控えめに店を出る。
明日はコンサートなので夕日撮りは今夜1回勝負である。
ボクが夜景を撮る場所も半年前から決まっている。
腕の角度に上り坂がいかに急なのかが覗える。
「ここを登っていくんだって。行く?」
行く!!
急坂どころか階段だった。半日歩き回って足は痺れているが幸い鋭い痛みがない。一生懸命ボクをいい撮影ポイントに導こうとしているドレミをがっかりさせたくない。
ヘットヴェアバスタイ(砦の要塞)と呼ばれる展望所。
む,無念。70-200を担いで上がればよかった。
旧市街の灯りが点る。
9時の鐘が鳴り響く。
辺りが急に暗くなったので急いで町に下りる。少し登って北側の道を下りた方がいくらかなだらかそうだ。
下りてみたら…
なーんだ。午後に写真を撮ったあの階段に下りてきた。
早く帰って寝ないと明日は朝から忙しい。