Aug.8th, 2018

11.街歩き

早撃ち


ホテル ALL YOU NEED 自慢の朝食テラスからの眺望。



さあ,いよいよ今日は1日ザルツブルク観光である。鎮痛剤を全種類飲む。

「しゃあ!来い!!」

何が何でもドレミの予定表通り歩いて見せるぞ。



連泊なので枕銭を置く。しるこサンド付き。



いざ!出陣。



旧市街へ向かう。



天気は良好。



地下道の落書きのレベルがやたらに高い。


こんなとこ初めて見たよ。見とれてしまってマーケットの写真がこれしかない。


昨日,下見に来た祝祭劇場に到着すると,もう列ができ始めていた。

「シュウはあっちの日陰に座ってて。」

はいはい。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


劇場のツアーがスタートした。見物するだけで7€もかかる。ボクたちの参加した朝一番のツアーに同じ目的らしき同年配の日本人夫婦がいた。ご主人がフルサイズ一眼に24-70L*…ボクと同じものを狙っているようだ。

「ふっふっふ。その画角で果たして足りるかな。」


旅慣れたボクはいつもの17-40L*を装着。テキも奥さまに依頼されて張り切っているご様子。絶対に負けられない戦いがそこにある(笑)

*24-70L:キヤノンのレンズEF24-70mm f/4Lのこと。 *17-40L:同じくEF17-40mm f/4L


男の戦いをよそにドレミは真面目にツアーコンダクターの話に聞き入っている。ドイツ語のあとに英語でもう一度繰り返してくれるので分かる。ちらちらとコンダクターが聞いちゃいないボクを気にする。どうやら彼にはボクの目的もバレている。



「ここよ。この部屋。フェルゼンライトシューレって書いてある。アレも撮っといて。」

ドレミが小声で耳打ちする。歩きながら黙って連写をかける。



いよいよだ。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM

シャシャシャシャ。シャシャシャシャ。露出を変えて二度連写。さらに奥の入り口をズーム。シャシャ。ここでコンダクターから写真撮影は後にしてほしい旨,注意が入る。想定内である。早撃ちシュウの任務は完了している。

ここフェルゼンライトシューレは映画「サウンド オブ ミュージック」(以下,単に映画と表記)のクライマックスでトラップファミリーが出演する音楽会のロケ地である。奥の入り口はゲシュタポの兵が一家の逃亡を知らせるシーンで使われた。大河ドラマ「真田丸」で三谷さんが九度山脱出の場面をこのシーンのオマージュで描かれた。涙を流して笑ったものだ。

映画のファンがこの劇場を見学して写真に収めるためにはこのツアーに参加するしかない。が,コンダクターが面白くなさそうにするのにもわけがある。


「確かに映画を観て外国からザルツブルクを訪れる人は非常に大勢いらっしゃいます。観光業はそれで大きな恩恵を受けています。それには感謝しています。が,ザルツブルクはそれだけではありません。歴史と音楽の町なのです。」

コンダクターの弁である。もっともなことである。


さらにアメリカや日本では大ヒットしたこの映画は地元オーストリアではあまり知られていない。大戦中に亡命してアメリカで成功した音楽一家の話である。オーストリアで人気がないのも当然と言えば当然である。見ていない人も多い。例えばボクは「ラストサムライ」も「キル・ビルVo.1」も「SAYURI」も見たことがない。いずれも日本を舞台にしてアメリカでヒットした映画である。「キル・ビル」などは新宿がロケ地だそうだがボクは一切知らない。そうしたものだ。


ツアーの大半は音楽好きで本当にこの劇場について知りたい人ばかりだった。質問もビシバシ飛んでいた。ドレミもその例外ではない。ツアーはリハーサルの都合ですべての劇場を見学できない日もある。この朝は大劇場とモーツァルト劇場を含め三つとも見学できてご満悦。いそいそと足取りも軽い。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM

祝祭劇場を出てほど近くにあるケーブルカー乗り場に移動する。


ワンコは城の外まで。…要するにケーブルカーには乗せてくれる。ボクたちはザルツブルクカードを行使!!ザルツブルクカードはお得なばかりでなくチケット売り場の列をパスできる。



来た。ケーブルカー。



急こう配を一気に登って見る見る旧市街が下になってゆく。


ホーエンザルツブルク城


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


ホーエンとは高いという形容詞らしい。Festung Hohensalzburg…直訳すると高(上)ザルツブルク砦。

 



11世紀,大司教ゲプハルト・フォン・ヘルフェンシュタイン1世が対立する皇帝派に備えて,ここメンヒスブルク山頂に築いた。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


その後,15世紀に増築されたものの,数々の戦乱を潜り抜けてほぼ原形を留めている。



看板の地図とガイドブックとグーグルマップが全く一致しない。目的地はこの山城を下る途中にあるのでケーブルカーは使えない。



結局,城から下る道は1本しかない。これを行っていいのかどうか。ボクの腰の状態は坂道の登り直しを許容しないだろう。



ドレミがボクを待たせて200メートルほどを下り人に聞いて来た。

「オッケーだって。こっちー♪」

おう!


ノンベルク修道院


城を出た後,分かれ道を西に下る。



間違いない。この方角だ。




映画の重要な舞台のひとつノンベルク修道院。



美しい光の中でたどり着いた。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM

撮影許可が出なかったこともあり,実際に映画に使われたのはこの門と中庭だけで,あとは別な場所でのロケとセットで撮られている。


そんなロケ地があってもいい。



町に下る。ロケ地巡りはまだまだこれからだ。



ノディ渇いた(笑)

そろそろコーラの甘さに辟易して,高~い水に手を出しつつある。



ここは聖ペーター教会ペータースフリートホフ墓地
正確には「セットのモデルになった場所」である。ゲシュタポに追われた一家が墓石の陰に隠れるシーン。ノンベルク修道院内という設定だ。


ミナ


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM

レジデンツ広場のレジデンツ噴水。マリアが「自信を持って」を歌いながら馬の彫刻に水をかける。記憶違いでドレミをヘンなところに立たせてしまった。

隣接したモーツァルト広場にはモーツァルト像。ドレミはモーツァルトにも忙しい。


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM

大聖堂。創建は774年,現在のバロック様式の建物は17世紀のもの。


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


堂内にはモーツァルトも奏者を務めたオルガン,そして洗礼盤がある。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


旧市街のメインストリート「ゲトライデガッセ」



黄色い建物がモーツァルトの生家。入場料はなんと10€だがボクたちにはザルツブルクカードの印籠がある。中ははやり撮影禁止だった。



飼い主がボクたちと同じようなところを観光しているのであろう,自転車の番をしながら待っているこの子を見かけたのは二度目である。人懐こい視線を送ってくる。ちょうど飼い主の女性が戻って来たので声をかけた。

男の子ですか女の子ですか。


「女の子よ,名前はミナ。ミーナじゃなくてミナ。」

日本人のような名前ですね。

「そう,日本人の名前をつけたの。あなたたち日本から来たんですか?」

ええ,ボクたちの犬はタロー。昨年末に亡くしました。

「Oh…」

じゃあミナ。元気でね。


映画のロケ地巡りは続く。

「あそこあそこ。」


モーツァルト小橋。子どもたちとマリアがドレミの歌を歌いながら渡る。


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


こちらは馬洗い場。馬は洗っていないが佇まいはロケ当時とほとんど変わらない。



東へ歩く。



昨日モーツァルトの住居で使い出してから21時間。きっちりドレミの予定通り近代美術館へ上るエレベーターでザルツブルクカードを使い納める。近代美術を鑑賞しに行くのではない。

見よ,いい大人がこのいたずらっ子のような顔。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


目的地は美術館前の市内を見下ろす展望所。

ドレミの歌を歌うファミリーの後ろにザルツブルク城と町の景色が広がる印象的なシーンのロケ地である。



EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


さすがに疲れた。日陰にしゃがみこむドレミ。

本日のロケ地巡りはここで終了。


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