Aug.8th, 2018

15.ロマンティック街道

ネルトリンゲン


「ネルトリンゲンはどう?」

なんだ。その悪の秘密結社みたいな名前は?

旅の行き先もそろそろ帰りの方向に進む必要から自由度が低くなってきた。再びドナウ川を越えて北へ走っている。


ノイシュバンシュタインのあるフュッセンから今回の旅で最初に訪ねたヴュルツブルクまで南北に約400kmがいわゆるロマンティック街道と呼ばれているルートだ。ロマンティックは漠然と中世のことを指していて,その名の通り中世の佇まいを残す街が多く点在している。中でもネルトリンゲンは人気の街のひとつらしい。

そこにしよう。

ボクにとって最大の魅力は聞いたことのない名前だというところだ。

ドイツの一般道は制限速度100kmだが町に入ると次々に標識によって30~40kmに制限される。取り締まりをしているのも町の入り口である。速度を知らせる電光掲示板は以前からあったが,今回は制限速度を守っているとにこにこマーク,超過するとぷんぷんマークが表示されるようになった。↓



ネルトリンゲンの城壁のすぐ外にある無料観光駐車場に首尾よく1台分のスペースを見つけた。



この街がこのように完全な円形をしているのには訳がある。ネルトリンゲンのあるリース盆地は1500万年前に隕石の落下によってできたクレーターなのだ。街は城壁とリムの高地によって二重に囲まれている。



城壁の内側は絵本の中かと見紛うほどの有様であった。街の円の中心に教会の塔が聳えていて登ることができる。


EOS 5D MarkⅢ + EF50mm f/1.2L USM


教会の中で塔の入り口を聞くと丁寧に教えてくれた。


EOS 5D MarkⅢ + EF50mm f/1.2L USM


入り口があった。



巻貝の殻の中。



これは今のボクには手強い高さだ。



ふう。



思うに日本人観光客は高いところがよほど好きなのではないだろうか。ゴンドラやエレベーターなど高いところへ登ろうとするとまことによく日本語を耳にする。



この日,この時間,この塔の人口は推定20人あまり。そのうちボクたちを含め日本人が4組12人だった。最初はツアーバスでも着いているのかと思ったが,それぞれ別々に個人旅行している人たちで,つまり偶然この階段で出会ったわけだ。ボクの「日本人高いところ好き理論」偶然とは考えられないこの事象から導き出した。


「もう少しですよ。がんばってください。」

むろんボクたち以外は若き冒険者たちばかりである。踊り場の椅子であえぐ同郷のお年寄り(笑)にやさしい言葉を惜しまない。それにしてもツアーバスでなければ彼らの交通手段は何だ。なるほどこの町には鉄道が通っている。列車を乗り継いでこの塔を目指してきたのだろう。まあ今どきの若者にしてはたいしたものだと褒めておくが,ボクがキミたちくらいの年のときは機関銃を持た係員に賄賂の品を渡して国境を越え一人旅していた。今でこそ階段でもへばってはいるが…。


塔の最上階の下に受付があって料金を徴収していた。



「日本人高いところ好き理論」を裏付ける資料。


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


息を呑んだ。この塔にたどり着く価値も登る価値もよくわかる。



ボクたちのくぐって来た城壁の門を見つけた。


EOS 5D MarkⅢ + EF50mm f/1.2L USM


北緯50度,ドイツの夏は短い。秋風が塔を吹き抜ける。



「あ,電車!」

家々の屋根と同じ赤い色の電車がネルトリンゲンの駅に着いた。



愛想も可愛げもないネコがいる。呼んでもフンとあからさまに無視する。



有名人(猫?)らしい。お見逸れ。



石がたくさん展示されている。あるいは隕石に関係するのかもしれないが読めない。


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM

「ねえ,あれやってもいい?」


ゴリゴリゴリゴリ

1€で50セント硬貨を記念メダルにする機械。



「曲がっちゃった。回すの失敗したかな。」



路上にボクを待たせてあちらこちらと店を出入りしているが今日は収穫がないらしい。


EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


もう腰がいっぱいいっぱいなので,城壁の上を歩くのはちょこっとだけにした。中世のままの回廊になっている。


ディンケルスビュール


ネルトリンゲンに宿を取るつもりだったが値段が高すぎるので北へ1時間ほどのディンケルスビュールという舌を噛みそうな町に都落ちした。ホテル予約サイトに当日特別割引で正規の半額近い値段の宿が出ていたのだ。


着いてみるとオンボロだがまさにここが街の中心というべき広場に面していた。向かいは教会である。


古色蒼然たるロビー。骨董品のような調度類。調子のいいフロントのオヤジが応対に出た。胡散臭い。どうやら宿はこの本館ではなく裏の別館らしい。



加えて8時以前の駐車には別料金がかかるとふっかけてきていてドレミがつっぱねている。そもそもほとんどの泊り客は8時以前に着くだろう。ボクは「なめんなよ。予約サイトに明記されていない違法な請求だ。ブッキングドットコムに抗議してNOTICE!の書き込むするぞ,くぉら!!」くらいのダーティーな英語を頭で組んで二人の間に割って入ろうと思ったが,どうやら追加料金なしということで無事チェックインが終わったらしい。

別館はほとんど棟続きで割引予約専用かと思えばそうでもなく宿泊客もそこそこいた。


宮殿の扉のように大きなドアを開けて部屋に入ると,古いながら掃除も行き届きシャワー設備も新しかった。ただ…このベッドの角度はどうだろう(笑)

これもまた楽しい。1万円縛りで宿を探しているのだから色々ある。それも醍醐味だ。


何よりここはこのテラス席だけでも充分満足できる。

EOS 5D MarkⅢ + EF17-40mm f/4L USM


旧市街の中央広場に臨んでいる。それに実際に接客しているきびきび気持ちのいい若いスタッフがとても感じのよい女性だった。




ドレミが指差したのが壁のこの看板である。まさにこれこそを看板メニューと言うのだろう。いったいどんな料理だろう。ワクワク。



ワインは痺れるほどうまい。



ブラウンソースのソーセージ



スペシャルなザウワクラウト

そして…



出たー(;^_^A

あの豚スネ肉!!包丁は刺さってないけど(笑)



EOS 5D MarkⅢ + EF50mm f/1.2L USM


空は夕焼けしているのに天気雨になった。

ごちそうさまー。それ!別館に走れ!!


↑目次へ戻る
→「16」へ進む