01/奇岩

Aug, 2007

道央自動車道で札幌を通過するとき,あまりに町がひっそりとしていて驚きました。折りからこの日,猛暑が北海道を襲い暑さに慣れていない町の人たちは外出していません。その人気のない大きな通りに,車も一台か二台が走っているだけなのです。お盆休みの日曜日,この町を故郷とする人が少ないのでしょう,市街が空洞化しています。まるで円谷映画のミニチュアの町を見るようです。遠く札幌駅の方に新宿のような超高層ビル群が見えます。ほくでん…北海道電力が中心になって,東京や大阪の大手ゼネコンを引き入れた再開発が行われているのです。高層ビルが町を睥睨している怪獣のごとく太陽の光を反射して聳えています。

小樽で高速道路が途切れ,市内をバイパスする道路は観光客でごった返す運河沿いを西に抜けて再びスムースに流れ始めました。


夫婦岩


小さな岬をトンネルで抜けて浦に出る度に,変わった形の岩礁が次々と現れます。積丹はなんと美しい海なのでしょう。奇岩の造形は自然の偉大さを感じさせます。古代の人びとはきっと神の仕業と思ったことでしょう。いや本当に神はいるのではないだろうかと,「この海は思わせます。大自然を素直に神として感じることができる力をこの海と岩は持っています。

積丹自体が大きな一枚岩でできているかのような堅牢な地盤に海が入り組んだ海岸線は,長い間,陸路でのアプローチを拒んできたことでしょう。いにしえの海を小舟に乗って,浦々を訪ねれば,入江ごとに違った文化を持つ縄文の人びとが,ちょうど夏の海岸を埋める海水浴客のように暮らしていたことでしょう。にしんが押し寄せる海と森に囲まれて,豊かに暮らす縄文人やアイヌの生活が目に浮かびます。

「あれは何に見える?」

修行しているお坊さんたち

「残念,夫婦岩だってー。じゃ,あれはなーんだ。」

立ちつくすお坊さん

「ぶっぶー。ろうそく岩でしたー」

ドレミが,目の前に次々と現れる奇岩と地図に書かれている名前を照合して楽しんでいます。道が少し新しく広くなって新豊浜トンネルという看板が見えました。10年ほど前に崩落事故を起こして,日本中に映像が中継される中,多くの犠牲者を出した現場です。


ろうそく岩


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