Apr.5th, 2019
14.イギリス横断三百マイル
ロンドンのホテルを予約してナビに入力したら
「270マイル 5時間30分」
と表示された。いかん(;^_^Aベスゲレルトで過ごしすぎた。
北ウェールズで天気の回復を待つことを決めたときに300マイルの大移動は覚悟していた。…が,山を歩いて汽車を撮ってクリームティのランチをしてしまった。まだ30マイル,1/10しか進んでいない。
イングランドへの国境付近を西へ急ぐ行く手に羊また羊。かわいい赤ちゃん羊が見えるたびに車内に歓声が沸く。(;^_^A
わかったわかった。15分だけだぞ。
時間を決めておかないといつまでも飽きずに見ている。ボクはその間に車で仮眠した。
流れる雲。遠くの啼き声。
跳ねる赤ん坊。
イングランドに戻って間もない頃だったか汽車の看板に導かれて広い駐車場に入った。何か道の駅のようなところで鉄道を保存して公開している施設だと思った。
ドレミたちはトイレを借りてボクは写真をバチバチ撮った。
働いている人はただ黙々と作業を続いていた。
実はパーキングでも観光施設でもないただの機械工場だった。いきなり乱入してきた東洋人に戸惑ったことだろう。でも咎めるでもなくニコニコしていた。ボクのイギリス人に対するイメージはずいぶんと変わった。
ひたすら走った。高速道路が一面の菜の花畑を何度も通った。あるいは芥子菜かもしれない。
ローカルな高速で休憩した小さなパーキングの売店で陽気にしゃべるお年寄り。ボクにはそれがとてもイングランドっぽく見えた。あとで水彩画にしようと思った。
飲み物を買って車に戻ってくるドレミがiPhoneを持っていたので,
「あのおじいさんを写しておけ。」
そっと耳打ちした。
「わかった。オッケー」
いや,声でかいし(;^_^A
つかつかとご老体に歩み寄り,
「こんにちは。帽子似合ってますね。写真撮っていいですかー?」
「お♪男前に撮ってくれよ。(…とポーズ)」
「カシャ!ありがとうございましたー♪」
「いい旅を」
…いや,そういう絵じゃないんだけど…(;^_^A
ま,いいか。
ロンドンまであと1時間くらい。しだいに高速道路の規模が大きくなってくる。ランナバウトを出損なって迷い込んだバスの駐車場で,ドレミがボクの腰をマッサージする。それを義母が心配そうに見ながら撮っている。
なあにボクたちはこれくらい慣れっこです。
明るいうちにロンドン郊外のホテルに着いた。
旅の終わりの宿は荷造りのためエレベーターが必須。いつものイビスにしようかと思ったらドレミが同条件+朝食付きでぐっと安い宿を発見した。
何か安いだけのことがあるだろうと思っていたら…
…やはりあった。
繁華街まで20分以上歩かないと夕食にありつけない。なんだか今回は節約しすぎたのか,初日の宿以外こればっかりだった。
ロンドンはイギリス料理が高くてまずいという専らの評判なので,ここまでとっておきのインド料理屋
リーズナボー♪
さて,何にしようかと迷っていると…
ん?
隣席から日本語が聞こえて来た。互いにビックリ。
この町に長く在住のアーティストらしき男性とその友だち。
「ロンドンでもこんな場末(本人の弁)の町に日本人観光客がお見えになることは珍しい。」
この店の常連だそうなので彼のおススメをそのまま全部注文した。
どれもまあまあおいしいが正直,ナンもタンドリーチキンも味は新宿西口の行きつけのカウンターしかない店の方がかなり上だ。東京にこの店を出したら半月でつぶれる。
「ワタシはこのイタ飯が大好きです。」
アーティスト氏がメニューを指差してイチオシしていたのがこれ。
カレー炒飯。…イタ飯の意味が違ってる(;^_^Aどうやら彼は日本を離れて長いようだ。
ともあれ,イギリス料理よりはずっと口に合う。
そしてお会計は財布に優しい。
そして帰り道は腰に優しくない(;^_^A
セリカT230があちこちで現役だった。
今,いちばん多く見かける日本車は断然ジュークである。この国の車の流行りは独特である。
アリゾナ,バスク,アモイ,ブダペスト,ザルツブルク,NYC…あちこち二人で歩いた夜道を思い出す。ロンドン(場末(笑))の春の夜は八重桜が美しい。
のろのろ歩くボクたちをバスが追い抜いて行く。
「あたし二階建てバス乗りたいな。」
…とドレミ。 ボクの明日の目標が決まった。