OUR DAYS2007年2007/6/29

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出勤前に交詢社通りにある洋服店に寄った。ご用達と言っても年に一二度ワンピースやスカートを買うだけだが、およそブランドものを身につけないなおみにとっては唯一の贅沢だ。

この洋服屋は以前の職場近くに支店があって偶然知った。ひかえめでフェミニンなデザインはなかなか他ではないので貴重な存在だ。

すでに先だっての休日になおみは下見しているのだが、いつもひとりでは決断がつかない。試着室に候補の服を抱えて入り、出てくる度にボクが○×を判定していく。


それにしても、あまりにもフツーな、おばあちゃんが縫ってくれたみたいな洋服にすごい値札がついているものだ。高いけれど、とても丈夫だし、流行とは無縁のオーソドックスなデザインなのでスカートなど7、8年たっても現役のものもある。安物買いよりは案外経済的なのかもしれない。今回は少し風変わりなワンピース2着とカーディガンを買った。

仕事の帰りに「冷蔵庫が空っぽだから買い物していく。」と、なおみが言うので、深夜営業のスーパーへ寄ることにした。近くの公園でボクとタローだけ降りて彼女は先にゆく。ゆっくり散歩させながらスーパーまで行っても、ふだんなら両手いっぱいに買い物を抱えたなおみが上がってくるのを屋上駐車場で待たされるところだが、この日は一足先にエレベーターから彼女が降りてくるのが見えた。手には食品の入った小さな袋を提げている。

「月末まで無駄遣いしないようにしなくっちゃ。」
「梅干しごはんか。」
「ふふふ」

 梅干しごはんというのは、まだ、ままごとのような家計だった新婚の頃、何かの拍子で「4,5日、梅干し食べてもお前の洋服だけは買う」と、ボクが宣言したことに由来している。「女房の洋服のために食費を削る」というのも、また貧乏生活の一興だと負け惜しんでおこう。

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