ゆうべの授業が終わってから中3の面談が2本あった。どちらも小学生のときから通ってくれている子のお母さんで、話ははずみ時間はのびる。待ちくたびれたタローの遊び相手をしながら、大急ぎで掃除や事務を終えて、ようやく帰路につく頃、満月は摩天楼の上空に南中していた。
「お月見しよう。」
「え?」
コンビニのお月見グッズはもう全部売り切れで、特設コーナーも片づけが始まっていた。
「お団子ないから、お団子サイズの大福もち買ってきたー。」
「上出来上出来」
いつもの公園に寄って車を下りると、空に広がった群雲に月が見え隠れしている。
「い、急げっ」
ブランコの脇のベンチに座って真上を見上げた。真夜中の月は、お月見にはいささか高度が高すぎる。雲の端が明るく光って月が顔を出した。
「それ!!」
ぱくっ!ぱくっ!
脇で見ていたタローのよだれがさーっと地面に落ちるので、
「タローもお月見する?」
と、ジャーキーを3つやった。ぱっくんぱっくんと美味しそうな音をたてるのを見ていたら、もう月が陰ってしまった。
あっけなくお月見は終わり、広場の時計を見たら日が変わっていた。