OUR DAYS2008年2008/7/2

恩師A先生の賀状に、「銀座Mデパートでの個展は今年が最後」と書かれてあった。ご高齢なのでいたしかたないと思いながら、とうとうその週を迎えた。みゆき通りを歩きながら、さすがに寂しさを感じる。卒業以来、20年近く、毎年、個展を拝見してきた。


会場に入ると、先生は去年よりまた二回りほども縮んでしまわれたように見えた。いつも受け付けで来客の接待をしている奥方も体調不良で外出できないらしい。今年はとうとう一度もここを見せてやれなかったよと先生がつぶやく。
作品は相変わらず、どこからこんな精力が出てくるのかと驚かされるほどの大きさと点数だが、風景には往年の輝きは感じられない。

「でもね…」

腰もずいぶんと曲がってしまっているので、胸を張る代わりに目だけがぎょろりと上を向く。

「イマムラくん、来年もここを借りられることになりましてね。」

なんとそれはよかったですね、と言いながら少々お体が心配にもなる。

「また、一年間、これのためにたくさん描くわけです。」

そう言ってにやりと笑う。なおみが思わず

「今年こそ、また、あちこちご案内します。」

と言った。

「連れてってもらいましょう。」

遠くを見るようにつぶやく。視線の先に、紅葉の山や桃畑が広がっているのだろう。穏やかに目を細めた。ボクは今年後半、絵をがんばることに決めた。

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