休みの月曜日。デジカメをセンサークリーニングに出したついでに,キヤノンのSCから何気なくEFレンズの最新パンフレットを持ち帰った。
キッ チンでコーヒーを飲みながらパラパラとめくっていると,ふと背後になおみの気配!とっさに後ろ手に隠してから何もやましいことのないのに気づいた。当面, 家計を揺るがすようなLレンズの購入予定などあるはずがない。悲しき性か条件反射。洗濯物の籠を抱えたなおみの方が驚いた。
「まさか,またレンズ買う気じゃないでしょうね。」
ぬ,濡れ衣だー!痛くもない腹を探られて,
「ま,ま,まさか,レンズなんて,な,な,何言ってんのかなあはあは。」
なぜどもるんだー!!李下に冠をたださず。あわれ真新しいカタログはボクの手からすいっと取り上げられ ゴミ箱に捨てられてしまった。
さて,2時間ほどPC作業に熱中していると,いつの間にかデスクの脇にカフェオレが置いてあった。記憶にないということは,なおみがせっかく入れてくれたのに,たぶん生返事で応えたものだろう。どれ,遅ればせながらお礼でも言おうかと,ほどよく冷め始めたカッ プを片手にキッチンへ行くと,まさしくなおみが,もらいモノのケーキの残りをほおばろうとした口のまま固まっていた。横にいたタローまで,がばりと立ち上がった。
一瞬の気まずい沈黙を
「し,シュウ,ケーキ食べる?」
なおみの間抜けな応えが破る。攻守逆転, なぜかしどろもどろのなおみ。
いや,ボクはただカフェオレの礼を言いに来ただけだって。だいたい,コーヒーを持って来たとき,「ケーキ食べる?」くらい聞いたのかも知れないし,よしんば聞いていなかったとしても,一切れ残ったケーキをボクが食べると言うはずがない。
つまりなおみに後ろめたいことは何もないのだが,如何せんタイミングが悪かった。タローに至っては寝そべっていただけである。後ろめたいどころか何もしていない。なぜ,イタズラでも見つかったときのように慌てて立ち上がったのか。
三者三様,間の悪い午後であった。