降り続いた雨も上がって,職場からいつもの土手にタロ散に出た。
「タロー,ボールはダメだぞ。まだ,地面がどろどろなんだから,そっと歩いてくれ。」
と,そこへどこか遠くで呼ぶ声がする。
「シュウせんせー!」
なおみの英会話に急ぐ小学生たちが,橋の上から手を振っている。
「おー!こっちから来いよ。タローもいるぞー!」
「あ!タローだー♪」
し,しまった!
と,思ったときは時すでに遅かった。土手に駆け下りてくる子どもたちに向かって,猛然と走ってゆくタロー。
「あー!!タロー!ストップ!」
…って,聞くわけないよね。しかも楽しそうな子どもたちの様子にスイッチが入ってしまった。土手を駆け下り,駆け登り,川原いっぱい走り回る。
あまりのスピードに驚いた子どもたちも引き気味。
「あああ!」
跳ね上がった水をたっぷりと吸い込んだ毛足から,ぽたぽたと泥水が滴り落ちている。
ふと,小学校の掃除で使ったモップを思い出した。木の柄に布製の紐がたくさんぶら下がっているようなアレだ。教室に戻ると,ちょうどM奈が遊びに来ていた。
「助かった。手伝ってくれ。」
雑巾を洗うこと,のべ50回余。ようやく室内を歩ける程度になったモップは,M奈にじゃれてご機嫌,罪の意識なし。
「なおみに叱られるのはオレなんだぞ!全くぅ。」