OUR DAYS 2009/3才2009/6/27

一年に一度,背筋をピンと伸ばし姿勢を質す日がやってきた。銀座にあるデパートの画廊で大学の恩師が毎年個展を開く。入り口に立って客を迎えている先生は去年より元気そうだった。ボクは直立不動の姿勢で挨拶する。背筋伸び伸びマックス。「拝見します。」と,歩き出すとき,左手左足が一緒に出てしまったほどだ。

作品はサムホールを含めて60点をゆうに超していた。選ばなかった作品を同数とみても,3日に一枚のペースで描いていたことになる。ボクの父とおない年だ。恐るべき創作意欲に心の背筋までが伸びる。

さすがに静物と花がほとんどで,とうとう風景画も裸婦も一点ずつになってしまったが,描かれた壺や果物の正確さはどうだろう。製図機械で描いたのかと思うほどきっぱりと迷いなく色が置かれている。先生の腰はすっかり曲がってしまったが,構図はますます背筋が伸びている。

老境に入り,階調はよりシンプルになって鮮やかさが際立つ。それはただの単純化ではなく,ストイックな色の抽出あるいは選択の過程をはっきりと感じさせる。具象画なのに,ほとんどのモチーフが3色か2色の階調だけで生き生きと描かれている。

やっぱりボクの先生が世界で一番上手いや。

上手いけどパワー不足は否めない。絵にも往年の輝きはなく,会場の活気もなかった。

もう一度,先生と写生に行ってイーゼルを並べることができるだろうか…個展を後にしながら思った。ボクのそんな感傷をよそに,なおみは隣接するローラアシュレイのセールに突入してゆくのであった。

この日,マイケルジャクソン氏の訃報あり。

NEXT