母のKissDXの画像にヒビのように大きな黒い影が入る。調べてみると、センサーの上にマロン（柴犬）の毛が横たわり、ミラーの開閉部あたりに挟まって落ちてこない。いったいどうしたらこんなことが起こるのだろう。とにかくボクには手も足も出ない。
「キヤノンに持ってって取ってもらうしかないな。」
そう言って預かって来たものの、さて困った。キヤノン新宿SCでは先だって大立ち回りを演じてしまったのだ。ほとぼりが冷めるまで行きづらい。かと言ってなおみに頼もうにも、ただのセンサークリーニングではないので症状を説明しなくてはならない。
あーあ。犬の毛がセンサーに挟まって取れないなんて、カッコ悪いことおびただしいなあ。SCの前で暫く逡巡したが覚悟を決めるしかない。別に後ろめたいことはない。ボクは胸を張ってドアを開けた。
あれ？誰も覚えてないのかな。隣で接客してるのは、あのときの担当だったK山クンじゃないか。目が合った。会釈した。K山クンも会釈したが何だかヘンだ。ボクを忘れてる？それとも本物のクレーマーなどは、もっと凄まじくて、ボクなんかの案件は記憶に残る事件のうちに入らないのだろうか。
カメラは90分で即日修理できると言われたので、預けていったん帰ろうと、自動ドアに立ったところでメイクセンス！全てが分かった。
ドアに映ったボクの顔！そう、これでは変装して来たようなものだ。
今月初めから髭を剃っていない。かれこれ2週間近く、かなりもじゃもじゃになってきていた。昔は結構、お盆休みに伸ばしてそのまま出勤し、子どもたちを脅かして楽しんだりしたものだが、最近は顎の方が8割方白くなってきたので伸ばすのをやめていた。今年は休み中、両親以外の誰とも会わないので、現状を知ろうと、久しぶりで伸ばしてみたのだった。これではK山クンですら気づかないのも無理はない。
ちなみに周囲の評判は「きたならしい」「貧相になる」と、すこぶるかんばしくない。