八ケ岳の登山口あたりを紅葉狩りしながら歩いていたときのこと。
タローのクンクン匂いかぎが急に激しく急いてきまして…、道を外れ、落ち葉の中を荒々しくかぎ回ります。ときどきこうして本能に目覚めます。猟犬だった先祖の血でしょう。
突然、後方の崖に飛び込みます。…垂直です。初めて見たときは落ちたと思って肝をつぶしました。が、タローも森の動物たちも垂直の崖を上り下りできるのです。
はるか下方の茂みで激しく争う物音がします。タローが獲物に追いついたのです。都会では野良猫に睨まれて逃げ出すくせに森では別人(犬)の猛々しさを見せます。
「鹿かなぁ。」
↑さっき別荘地で鹿の母子を見かけていました。別荘地よりも標高の高いここならクマがいても不思議ではありません。
「クマだったらどうしよう。」
「子グマならタローの方が機敏で強かろう。」
「でも、子どものケンカに親が出て来るかもよ。」
「げ、そしたらタローのパパはオレじゃん。」