心身ともに限界が来ていた。
「脳が動かない。」
「笑顔が固まった。」
脱出するしかない。インターネットで犬と泊まれる温泉宿を検索して予約した。少し遠くならどこでもよかった。
日曜補習をM奈に丸投げして高速に乗り、関越トンネルを抜けた。何でもない村外れに画架を立てる。
ちゅるちゅるちゅるちゅる←疲れが溶けてゆく音
時間を忘れて没頭していると、なおみとタローが川遊びから帰ってきた。
親子でかけっこ、何度も何度も…。田んぼの中の農道がタローにはいちばん楽しい遊園地だ。
夕焼けに山が染まる。
「今日はカメラはいいや。」
画材を片付けながら、ぼぉっとマジックアワーの景色を眺める。思い出したようにお腹がぐうっとなった。夕飯がごちそうだから、昼はおにぎり1個で我慢していたのだ。日が沈むと急に風が冷たくなった。
「さ、早く湯に浸かって地酒をきゅうっといこうや。」
大型犬を同伴できる温泉宿なんて、ほんとタローといっしょに泊めてくれるだけでありがたいわけでして、泉質だの食事だのロケーションだのは一切問わずに予約する。今回も家を出てから「どこにあるんだ?」てな感じ。とりあえずインター下りたら絵を描いて、そのままチェックインした次第である。
さて、夕食のとき、隣席のご夫婦が生ビールをやりながら何やら歴史談義をしている。思わず近くの史跡を聞いてみると、
「えー!?知らずにここにお見えになったんですか?」
と、あきれられた。なんと宿の周辺は去年の大河ドラマ「天地人」ゆかりの地。去年は観光客でひしめいていたそうだ。さっそく翌日はボクたちも俄か歴史探訪。
帰宅してから、さっそくビデオ屋さんで「天地人」を借りて見た。なるほど、あの子役は泣かせてくれるねえ(笑)1年遅れの越後ブームが来ている。