本日天気晴朗なれど冷たい風甚だ強し。
風がどんと窓を叩くと、部屋が揺れるほど。そのたび、すわ余震かと思う。
がまんできなくなったタローが頭をもたげ、
「ぅお」
と、小さく低く短く吠えてボクを呼ぶ。
土曜なので車で出掛けた。歩道を歩く人がときどき立ち止まるほどに風が強い。東北地方に東風よ吹くなと願う。せめて被災地に放射性物質を運ぶなと。
ガソリンスタンドに列はない。悪夢の日から半月が経った。なおみが目敏くソメイヨシノが数輪花をつけているのを見つけて指差した。風に激しく揺れる枝にま白い。
そうだ!桜は何をしてゐるのだ。
早く北上して、その可憐な色で傷ついた風景を埋め尽くせ。
あふれるような明るさで悲しむ心の空洞を埋め尽くせ。
その単一の遺伝子を持つ花弁で、日本人の心は一つだと伝えるのだ。