昨秋,膝の手術のために早く帰京したため,母はしらべ荘にいる間に免許の更新ができなかった。高齢者講習があって東京では更新手続きができない。暮れに茅野まで講習に行ったときは,朝から吹雪になって高速バスが欠航し,急遽あずさで急行して何とか受講することができた。
更新手続きにもひとりでバスで行くと言うが,また何かあると厄介なので,車で送って行った方がマシだ。こうして今年最初の,そして2月まで最後の補習のない日曜は母のために使われることになった.
休日の更新は塩尻の試験場まで行かなければならない。しかも開場の午前8:30には1000人近い列ができるので,1時間で締め切りとなるらしい。
東京を出たのは暗いうちである。今年は休日の早朝に出かけることが多い(;^_^A
到着は開場ぎりぎりだったが,ほとんどの人がひとりで車を運転してきているので,駐車場にその車を置きに行っている間に,猛然と受付を目指してダッシュした母は列の前の方に並べた。それでも1時間半ほどはかかる。
この待ち時間に山形村に住む知り合いを訪ねるつもりだった。確実ではないので事前に連絡してはいない。
電話してみてくれ。…ボクはコーヒーを買ったコンビニの駐車場でなおみに言った。
「あ!!」
な,なんだなんだ。
「忘れた!!」
な,何を。
「住所録忘れました!」
えー!!!ボクたちの連絡先管理は意外とアナログで,全てなおみの手帳に集約・管理されている。
住所も電話番号もわからないんじゃしかたない。写真でも撮りに行くか。…と,言いながら,みるみる不機嫌になるボク。顔や態度に出すまいとしても,なおみにはわかってしまう。
山形村全景
ボクがことさらにはしゃぐふりをしながら,道路っ端で筑摩山地など撮っている間,なおみはスマホの検索サイトに「山形村 ○△×樹(知り合いの名前)」と打ち込んでヒットした結果を根気よく調べて,ついに×樹さんが,村の会計係をしたときに村が作ったpdfファイルをweb上に発見し,そこからとうとう×樹さんの住所をつきとめた。
「ねえ,チャレンジしてみたいんだけど,このナビに入れてあるとこまで行ってみてくれない?」
写真を撮っていたバイパスから数百メートル離れた集落の中で車を停めると,なおみは助手席から飛び出して,庭に出ている人や道を歩いてきた人に手当たり次第聞いている。
「数年前に三河から越してきた○△さんのお宅をご存知ありませんか?」
200メートル,10人目くらいだった。犬を連れた女性が○△さんの奥さんを知っていた。家を訪ねると奥さんがいらして,×樹さんは集落のどんど焼きの準備を手伝っていると言う。このあたりではどんど焼きを三九郎と言うそうだ。
見つけた。
×樹さんだ!!顔が驚いたまま固まっている。
実は奥さんともご一緒に15年ほど前に八ヶ岳の山の中で登山中にお会いした。意気投合して互いの家を一度ずつ訪ねた。以来,「今年こそ会いましょう」という年賀状のやり取りだけがずっと続いていたのだ。彼もボクも律儀である。
彼が腰を抜かすのも,奥さんが覚えていないのもムリはない。住所が分かっていてもたどり着ける人は少ないと彼はしきりに感心した。母を待たせているので早々にお暇して,しらべ荘の様子を見に行った。
雪はたいしたことなかったが風呂場はまだ工事中なので泊まれない。だから,水道も開けずに帰京することにした。
タローはつららを食べている。がりがり!!
「マロンも食べる?はい。」
「ふん!!」
あらら(笑)