OUR DAYS2015年2015/4/2

早朝


3日目,暗いうちに起きてきのう見つけた浜に夜明けの海を撮りにきた。


なおみはひたすらサンゴのかけらと貝を拾っている。


道路でも何か見つけた。


ヤシガニである。宮古ことばではマクガン,アダンの実を食べて大きくなる。食用にされてきたが,絶滅の危機があり,捕獲が一部禁止されている。


太平洋に朝日が昇る。


昨日の海水浴ではしゃぎすぎたのか,タローが疲れ気味。


高腰城跡…と,看板に書かれていた。城跡マニアとしては外せない。丘に登ってみたが,雑草が生い茂って跡らしきものは石垣ひとつみつからない。城跡の石碑だけが,やたら立派に建っている。


いったん帰宅して朝食


町へゆく


なおみが収穫した貝やサンゴ。白で統一している。


右手の白いかたまりはサンゴではなく,ティッシュの山である。なおみが,いつもジムで見ている連続ドラマのここ数日の回をインターネット経由でまとめて見て号泣しているのである。


昼前,雲が出てきて少し涼しい。このチャンスに町に買い物に行くことにした。途中,一面のひまわり畑に出会った。


4月2日である。


町に来たのは他でもない。まさかこんなに暑いとは思わず,二人とも半袖の夏着が全く足りない。ほとんど裸で過ごす毎日なのである。


お昼は宮古そば

もちろん基本は沖縄そばだが,細めの平麺が他にはない特徴である。


観光客にはイメージ作りの上手なKそばが圧倒的に人気だが,スーパーや食堂でシェアを二分しているH製麺の方が地元の評判は高い。


左が宮古そば。具は三枚肉とかまぼこ,それに刻んだネギが決まりである。

右は観光客向けのラフテー(角煮)入り。

伊良部大橋


宮古島と隣りの伊良部島をつなぐ伊良部大橋の竣工は今年1月31日,2ヶ月前に開通したばかりである。もちろん,知らなかった。知っていたら,混雑嫌いのボクが来るはずがない。


…が,ご覧のように交通量はたいしたことがなかった。

橋長 3,540m

…橋脚がサンゴの上にぐさぐさ立っているように見えるが自然へのダメージはないのだろうか。


甘い匂いに誘われてみると製糖工場だった。


さとうきびが野積みされている。

美幌でも製糖工場を訪ねたが,ビートの収穫は10月頃からだった。伊良部島のさとうきびは年に何度も収穫されるのだろう。


「黒糖アイス」の看板にまんまと誘われた。


この大きさで250円…

さて,お味は…



はい,タローにもあげるね。


アイスのおかげで小さな集落の奥にまで入ってしまった。


道を歩いているだけで,見知らぬ人から「ウチの庭でお茶を飲んでいけ。」と誘われる。


堤防の向こうから子どもたちのはしゃぐ声が盛んに聞こえて,タローは気になってしょうがない。


どうやら桟橋からかわるがわる飛び込んで遊んでいるらしい。


羨ましそうに眺めている。こんなとき,タローが本当の子どものように思えてくる。


下地島


タローとママが眺めている対岸は伊良部島の西側に張り付く下地島。隔てる海峡は川のような幅で,そこに何本も橋がかかっていて,ほとんど別の島とは感じない。

下地島の丘一面にさとうきびが育っている。


こちらは収穫期をずらす目的か,これから植え付けが始まるようだ。

下地島には1970年代,採算の見込みが全くないままに空港が建設された。小さな島のほぼ端から端までを滑走路が占める。当然だが経営は成り立たない。


主に航空会社の離着陸訓練空港として運用され,一時はジャンボジェットが豪快にタッチアンドゴーを繰り返す場所として,マニアの間で評判になり,カメラマンが集まって来たらしい。


この日も

「小型だけど1機,離着陸が予定されてるってよ。」

なおみが空港に問い合わせて聞いてくれたらしい。滑走路の端にはそれらしい素人カメラマンの車がちらほら集まってきていたが,ボクにはその気がなかった。


飛行機の代わりに堤防から糸を投げていた少年の釣り上げたアジを撮った。サンゴには飛行機ではなく銀色の魚が似合う。

かつて下地島周囲はサンゴ礁のリーフで,そこに大昔の津波が運んだ巨石,奇岩が点在する絶景だったという。重機がサンゴの上を走り,巨石を回収しては空港の土台として土に埋めていった。サンゴ礁の形成には何万年もの年月が必要だが,壊すのは数年で足りる。


この巨石は大きすぎたために滑走路の礎石には使えず放置されたらしい。だからこの鳥居や岩の前にある石碑はその後建てられたものにちがいない。

大日本帝国万歳 伊良部島は帝国の宝石である。吉田松陰に学び,天皇を神として敬えなどというたわ言がわざわざ石に刻まれて書かれている。

よっぽど勉強していないのだろう。教えてあげてもいいが,この石碑が建てられたときからすでに大日本帝国という国は存在しないし,天皇は神ではない。ボクが下地島の住民なら,この無粋で愚かしい鳥居の即時撤去を行政に求めるが,一観光客,それも犬を連れた迷惑観光客として口をつむぐのである。


こちらは通り池という観光名所。


鍾乳洞の天井が落ちて池になった。ブルーホールと呼ばれる珍しい地形である。その上,底の方では海につながっている。


さらにすぐ隣りにもう一つブルーホールがあって,こちらも地下でつながっている。これはさすがに一見の価値がある。

…が,入り口には「輪廻転生」とか「人魚を殺して食べちゃった」伝説とか重たい言い伝えが書かれている。


観光地にするなら,もう少し爽やかで楽しい伝説に書きかえたらいいのにね(笑)ま,これはおせっかい。


重い伝説のおかげで,人出はいまいち。おかげでカルスト地形の海岸は貸切状態だった。


タローの消耗が激しい。もう,炎天下の観光はムリだ。


水も寝たまま飲んでいる。

ごきげん浜


下地島から伊良部島に戻った。いろいろキレイな景色はあるが,タローを海に入れてやらないと…



この浜にしよう。


水に飛び込むと一気に回復してボール隠し遊び。


ごろごろ



そしてボールフェッチ!!



浜の外れに無料の屋外シャワーが設置されていて,砂だらけのタローを洗うのにありがたい。


まだ遊び足りないようだけど,疲れすぎるといけないから,また明日にしよう。


ほとんど人がいないので,タローが乾くまで散歩する。

伊良部島


伊良部島の北端まで行ってみた。


尖閣諸島が近い。


巨大な鳥のモニュメント

公園にも空港にもこの鳥の像が多い。秋に海を渡ってくるワシタカ科の渡り鳥で「サシバ」と言うそうだ。かつては空を埋めるほど飛来したらしい。

 



宮古島へのフェリー乗り場跡。2ヶ月前まで,人や車で賑わった港だが航路は廃止になった。


南に回ると伊良部大橋が見えてきた。

時計回りに島を一周してきたことになる。


宿の奥さんはまだ伊良部島に行ったことがないそうだ。橋ができたので今度渡ってみようかと言う。どちらの島の人も那覇には所要でよく行くが隣りの島にはふつうあまり用がない。物資にしても同じだろう。フェリーの所要時間は20分あまり…サンゴ礁を渡るこの橋は本当に必要なのだろうか。


下地空港は今後の軍事利用が決まっている。それを考えるとこの橋の景色も少し変わって見えてくる。目と鼻の先にある尖閣諸島の先には,隣国が油井に擬した軍事施設を建設している。国防上,宮古に軍事施設ができることは致し方ないのかもしれない。


ただ,平和こそをと夕日に海に思う。


今日は夕焼けする予感がしていた。


待つほどに下地島に日が落ちて,空が焼けた。

天才宮古料理


グルクンを食べてみたいとなおみが言う。


宿にある調味料でできる料理を考える。


「野菜パパイヤだってー♪」と,なおみが買い物かごに入れた謎の果実の皮をむく。


海ブドウは生で食べるのがいい。てんぷらにすると,たいへんなボリュームになってしまう。


タローはボクの足許。この間になおみは鬼神のように猛然と掃除,洗濯,片づけをこなし,シャワーを浴びている。忙しくてかわいそうだが,ボクが真っ暗になるまで伊良部大橋で撮影しているのだから仕方ない。その代わり,南の島らしい料理は任せてもらおう。


バラ肉と野菜パパイヤのゴーヤチャンプル



海ブドウのサラダ



グルクンのソテー,バルサミコ酢とたまねぎのソース添え

これはあまりにも旨いので,小皿にとって,下の女主人のウチにお裾分けした。


島らっきょうともずく



スーパーであれこれ泡盛を物色しているうちに大発見をした。すなわち泡盛の原料はすべてタイ米である。

道理で凶悪な酔いが来るわけである。


早々にタローを抱いて眠る。同じ酒量なのに,このあと,なおみはテーブルを片付けて洗い物をし,ボクをベッドに運んでから寝たらしいが,もちろんボクは覚えていない。

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