29/北の丸公園
March 23th/2021
今年も東京のソメイヨシノの開花宣言は記録的に早い。心は浮き立つが,コロナ禍のもと非常事態宣言が解除されて都の新規感染者は増え始めている。
朝早めに家を出て,通勤途中の北の丸公園に自転車を下ろした。
咲いてる咲いてる。7分。
水を買って千鳥ヶ淵あたりまで散歩してみよう。
出発。
枝垂桜がもう盛りになっている。
近所の保育園の散歩に行き会った。
先生「ほら,咲いてる。きれいねー」
園児たち「うん!きれい」「きれい」「きれい」
なぜかうわの空の返事。それもそのはず,子どもたちは桜なんか見ていない。道に積もっている去年の枯れ落ち葉を踏んで歩くのに夢中なのだ。
サク!サク!サク!
「緊急事態でーす。」
しんがりを務めるきれいな声の若い保育士さんが列を止めた。
「Sクンが漏らしてまーす。」
園児たちはますます楽しそうに枯葉踏み。保育士さんたちは徐ろにSクンの周りに集まって来る。
風が吹いて枝垂桜の花びらが舞う。
サク!サク!はらはら…
うふふふ。あまり緊急事態な感じはしない。
こちらは小彼岸桜かな。花は小さくピンクが濃い。
田安門の向こうが真っ白に輝いている。
千鳥ヶ淵はもう9分通り咲いていた。
「あら!」
スマホの天気を見ていたドレミが声をあげた。
「東京,今日満開宣言だってよ。」
確かに靖国神社の境内はさらに開花が進んでいる。
自転車を停めて標準木まで行ってみると,なるほど満開である。
かつては気象庁に近い北の丸公園のソメイヨシノだった標準木がこの木に移って久しいが,どうにもなぜかこの辺りの開花は早すぎて東京の実情に合わない。渋谷や深川ではまだ6~7分咲きだ。
ほんの300mほどを歩いただけで腰が限界となり参道の床几台にへたりこんだ。ドレミがソフトクリームを買ってきてせめてものお花見気分。
たちまち鳩に囲まれた。
反戦家や日本軍の侵略を受けたアジア諸国からは目の敵にされる靖国神社だが,そもそも江戸っ子にとっても官軍は侵略軍である。一方的に官軍の戦死者だけを祀った東京招魂社の存在は快いものではない。
たとえ兵士であろうと戦争の犠牲者を悼む気持ちは誰も変わらないが時代は移り歴史の研究も進んだ。そろそろ神として祀るのはどうだろうかと思う。
江戸時代,この付近に力の齊藤と異名を取った神道無念流練兵館があった。武家屋敷の並ぶ静かな町に,ときおり竹刀の音が響いていたことだろう。
千鳥ヶ淵に沿って南下する。
英国大使館前まで来る頃には見る見る人出が増え始めた。満開宣言を聞いたせいかもしれない。今日はうららかな散歩日和だ。
密になり過ぎぬようボクらは撤収しよう。北の丸公園の駐車場までは車道を一気に走って5分足らずだった。