Apr.2nd, 2019
9.ムーアを開墾した人たち

ピーク・ディストリクト国立公園へ

ウィノーナと伯母を乗せ,5人で美しい丘の道を登る。


すでに南側の最高所。岩山の名は通称G(虫の名)山。そう言えばカブトムシもこの国ではGなみに嫌われていると聞く。だからビートルズと言うのはニュアンス的にはGズに近い。ポルノだ世界の終わりだゲスの極みだというよりもさらにインパクトがあったに違いない。

遠くにマンチェスターの街並みが見える。
「あのタワーマンションも,あっちのも中国人の投資家が殺到して買い占めてしまって,誰も住まないゴーストビルになってるの。」
…とウィノーナ。


道路脇にわずかなスペースを見つけて飛び込み羊を撮りに下りた。…タイヘンなことになった。四方八方から続々と羊がボクの足許に寄って来たのだ。

うっひゃー(;^_^Aごめんごめん。何もおいしいもの持ってないんだよ。ありゃりゃ,あんなに遠くからもこっちに来るよ。

あまりにありふれた景色なので,ふだんは車を停める人など誰もいないだろう。ましてや下りて柵に立つ外国人…羊たちもよっぽどもの珍しかったと思われる。

ウィノーナのスマホにメールの着信音。半年前からオーディションを受け続け,すでに準団員として出演しているスコットランドのオケから不採用の報せだった。ドレミが慰めている。この翌日にはBBCオケから契約延長のオファーがあって一転ガッツポーズ…一見お気楽そうな彼女がいるのは実は厳しいプロの世界だ。

連れだって村の雑貨屋に飲み物を買いに行く。二人はとても仲良しだ。かつてNYC留学中のドレミに発音の特訓をしてくれたのもウィノーナだった。

さて,二人が買って来たのはこれ。エルダーフラワーの白い花を漬けこんだシロップのサイダーである。こちらではとてもポピュラーだそうだ。甘くていい香りがする。

こげ茶色に見えるのはヒースという植物で,夏には紫色の美しい花をつけて見渡す限りを紫色に染めるという。
ムーアとは荒れ地のこと。これがイングランドの原風景である。

石灰岩のカルストがどこまでも続く。
ムーアを耕し,石を掘って積み上げ,コツコツと荒れ地を牧場や畑に作り変えた。気の遠くなるような作業の歴史。
イングランドは貴族の国ではない。ましてや王室の国でもない。

この風景を作り上げた民の国だ。
珍しくそんな思いを胸に愛機に70-200を装着した。今回も望遠をムリして持って来てよかった。

美しい斜光が差してきて丘陵が輝きだした。雲が流れ,次々と光が変化してゆく。






日が傾き光のドラマも幕を閉じる。
さあ,リークに帰って従妹たちがこころ尽くしの晩餐だ。


家路をたどる。

ウィノーナは料理自慢でボクの強力なライバルである。オクラホマではタッグを組んで和食パーティを開いたこともある。↓

だが今夜のメインディッシュはボクらがドライブの間にイアンが作ってくれた得意料理のフィッシュパイである。彼は陽気な助っ人と一緒にもう出勤していて今頃はリハーサルの最中だろう。

「どれでも好きなものを飲んで」
…とイアンが冷蔵庫に準備しておいてくれた中にウェールズのシングルモルト…これが絶品!!

サラダは大根に似た食感のイギリス野菜。

フィッシュパイは旅行中に東京でも作ってもらった。
ところでクイズです。演奏旅行で世界中を旅するうちに食通となったイアン。これまでで彼にいちばん衝撃を与え,人生観が変わったとまで言わしめた料理は何だったでしょうか。

…答えはウチで食べたフキみそ。母が作ったフキみそが冷蔵庫にあって,それを所望したのである。他にも温泉宿で骨酒や粕漬にもチャレンジした。
骨董品のような暖炉で薪がはぜた。

柑橘類のドライフルーツが入ったアイスクリームはウィノーナの手作り。