日常が戻った。
もちろん新型コロナウイルスの脅威が去ったわけではない。
そもそもウイルスに対しては完全な防止対策などあり得ない。
だが政府の政策も個々人も世の中の雰囲気も日常に復帰せざるを得ない状況にある。
ボクたちの職場の感染リスクは極めて低い。
小中学校と違って親御さんの意識が一律に高いからだ。
そうと知りながら自粛を続けたのは要請を遵守したまでのことである。
要請とは国や都や世論,そして評判という目に見えないプレッシャーによるものだ。
自粛と言っても休んでいたわけではなく倍量に近い代替の仕事をこなした。
たぶんそれが営業再開への顧客の支持率100%につながったと思う。
なおみが換気しやすいようにと,窓外の植え込みの雑草を引いて整備した。
初日に三分の1を終え,翌日出勤すると残りがすっかりキレイになっていた。
作業の様子が大家の知るところとなり,手を打ってもらったらしい。
ことごと,ボクたちは人に恵まれた。
この大家さんは5月分の家賃を振り込んだ翌日に「払ってくれなくていい」と言いに来られた。
感染防止や消毒のグッズはほとんど友人や顧客からもらったものだ。
そして何もしていないのに各種の公的助成金はすでに振り込まれた。
税理事務所の担当Sさんの方から電話をくれて申請をすべて代行してくれたからだ。
彼女がいなければボクたちは申請できることすら知らなかっただろう。
この資金を利用する本当の試練はこれからである。
すでに夏期,冬期の講習が中止もしくは大幅縮小せざるを得ないことが決まっている。
営業的にも実効的にも未曽有のできごとだ。
支援に恵まれたボクたちはどうしてもそれに応えなければならない。
チェロの稽古は1カ月半のブランクが明けた。
影響はあまり感じられない。その程度の水準だということだ。
先生のなおみも練習を再開した。先生の先生にも連絡をしてみようと思う。
始業前の1時間ちょっと,水彩の乾きを待つ間に→チェロ→ストレッチを繰り返すルーティン。
さすがに絵の方は勘がなかなか戻らない。
宅配でチョコが届いた。手渡された分け前を口に放り込むと
「一口で食べちゃダメ!!」
と叱られた。なんでも一粒で600円相当らしい。
結婚式の引出物のカタログギフトから最高のゼイタク気分を味わおうと選んだものだ。
一週間でフェイスガードはギブアップになった。
もっぱらデスク脇のカブが装着している。
原発事故で東京の浄水場からセシウムが出たとき,タローにはこっそりペットボトルの水を与えていた。
犬にも感染する恐れがあるというCOVID-19。
もしタローが生きていたらどんな親バカしていただろうと思うと不謹慎だがつい笑ってしまう。