右手の人差し指はとうとうタコになった。
エレキギターに必要なカッティングというストロークを練習しているためだ。
たぶんふつうの人はこんなところをこすらない。
練習しているのは職場の始業前である。
ボクたちの仕事は夜10時に終わるので,それから何かをするというわけにはいかない。
始業前が一般の人のアフターファイブにあたる。コロナ禍以来,早く出勤して職場で過ごしている。
ボクは水彩→ギター→チェロのルーティーンを三巡ほど,たまにストレッチや事務仕事をはさんでいる。
水彩にはwet in wetと言って,乾かないうちに別の色を画面上で合わせていく技法があるが,これを続けすぎると濁ってしまう。
いったん乾かして再び水をひくことを繰り返す。これがなかなか手を止められずに失敗することがしばしばある。
乾かす間に決然とギターの練習に行くのは作業を切る効果がある。
水彩の好不調はギターやチェロの練習ばかりか,その日一日の仕事にも大きく影響する。
だいたいその割合は晴れ一日,曇り四日,雨一日くらいの割合である。
絵が不調だとずっと気分が晴れない。我ながらもう少しセルフコントロールすべきだと思う。
チェロも分不相応の曲に挑戦している。
イメージでは簡単だと思っていたが,実際に楽譜を見るとこれがたいへん。
全体の1/3あたり,リズムが早くなり,ポジション移動が多いここの峠が厳しい。
脳と手の神経がちりちりと混線する。
「イライラしたときのために,バンと殴るビニール製のおもちゃ買って横に置こうか。」
と相談したらなおみに叱られた。
なおみはバイオリンそっちのけで練習しているのでチェロがめきめき上達している。
お手本に弾いて見せてくれるが聞くだけでは全く参考にならない。
脳がちりちりしたところで数小節だけ聞くと多少は頭に入る。
「おーい,ここからここ弾いてみてくれ。」
専ら大名の手習いである。
なおみは9月の発表会に出ることになった。
愛先生のお弟子さんの中でも熱心さを買われているようだ。
まだ先生には伝えていないが,その発表会を目処にバイオリンに戻ることになっている。
愛先生はその後,わがまま大名の初心者の指導を引き受けてくれだろうか。
なおみの始業前はチェロ,事務仕事,教材準備である。
お昼はなおみが作るお弁当とカセットコンロで調理する簡単ランチが半々くらい。
たぶん,コロナ禍が去ってもこの生活は変わらないだろう。
恒例のスイカ祭り。
夏が来た。
ソーシャルディスタンスすいか食べ(笑)
そう言えば東京の梅雨はどうなっているのだろう。