もう一度,いっしょに飲みたかったね。
半夏抄「オークスと花束」松江で幡ヶ谷で飲んだくれる。
日々の記録「90才の伯父を見舞う」樺太抑留の思い出を語る。
「四国旅行初日」高知で飲んだくれる。
訃報が届いたのは先週のこと,98才だった。
ボクが物心ついたときからスキンヘッドだった。40代でつるつるだったことになる。
笑顔しかみたことがない。なおみの一番の飲み友だちだった。
棺には馬券がたくさん納められてみんなの笑いを誘ったが,同じ数ほど母が宛てたハガキや手紙があった。
姑,小姑の辛辣な嫁いびりに泣いた母のたった一人の味方だった。
何度もこっそり銀座の不二家に呼んで,母の愚痴を聞き慰めてくれた。
が,表立ったことはしない人だった。
千駄ヶ谷の生まれで,眉唾の武勇伝もよく酒の時に聞いた。
馴染みの酒屋も四ツ谷にあって,ボクたちはその店に寄ってお供えする大吟醸を買ってきた。
亡くなってから持ってきても仕方ない。もう一度,ご一緒すればよかった。
98才である。全体的に大往生を穏やかに送る雰囲気の中,一人号泣していたのはなおみである。
母は棺を閉じるとき「お義兄さん,ありがとう」と叫んだ。
梅雨なのに信じられないほど暑い日だった。
伯父さん,さようなら。