OUR DAYS2017年2017/4/2

八代御立岬で温泉に浸かったあと,どうせ宿なしの犬連れ旅人には3つの選択肢があった。その1は八代海を半周して対岸に回って蜃気楼を待つ。2つ目は同じく天草に回って朝焼けの八代海を撮る。そして第3案はこのまま道の駅でへたばる。家族会議30秒で結論は出た。

へたばってもただでは起きない(笑)八代から御立岬までは「肥薩おれんじ鉄道」を海と一緒に撮影する有名撮り鉄ポイントである。


一緒に早起きしてついてきたタローの目が点。

詳しくはこちら

旅鉄。18/肥薩おれんじ鉄道


淡々と寝袋を片付けるなおみ。


ここのどこがおもしろいのか質問顔のタロー。

二人ともよく付き合うよね(笑)



真っ暗の中を渡って来た踏切だが,帰りは向かいの道路の道幅が乏しい。


あせって切り返したら…えーん。

こすった。


高速で北上して近世宇土城を訪ねる。いつも近くを通りながらなかなか来られなかった。どんなガイドにも「ほとんど何もない」と書かれていたこともある。


何もなくても大丈夫,桜が満開できれいだぞー。

と,二人には言ってある。


…全く咲いてなかった。


目ぼしい遺跡もない。そそくさと撤収。


本丸跡はゲートボール場になっていて,折しも近所のお年寄りによる大会の真っ最中。城跡散策ムードまったくなし(笑)


結局,遺構らしいものと言えば駐車場の土留めになっているこの巨大石垣だけ…。小西行長が関ケ原の戦いに敗れたあと,宇土城は加藤清正が隠居所として整備したと案内板にあった。さてはこの恐ろしく頑丈な石垣,清正公の仕業に違いない。


ウグイスがさかんに鳴き競う。本丸からはゲートボールの笑い声…夜明け前から動いていたので眠くなってきた。

城跡は古戦場でもある。いつまでもこうして平和であるに越したことはない。


不知火の道の駅に来た。何度目の訪問だろうか。なおみはタローのケアをしたり,車の掃除をしたり,お土産を物色に行ったり精力的に動いている。


眠たいボクはのんびり全く動いていない。

晴れの予報なのだが雲が多く,時おり天気雨のぱらつく不思議な天気だ。


八代海は凪いでミステリアス。

「そうかなぁ」

と詩情を解さぬモデルたちはそれでも楽しげに桟橋をゆく。

春休みの休日で賑わう観光地を離れ,誰もいない漁港で過ごす。いつまでこんな幸福な時間が続くだろう。


ブイの動きを警戒するタロー。最近,とみに臆病になった。


三角の駅は観光化されて賑やかだった。肉肉な状態から回復してはいないが,せめて熊本ラーメンを食べようかと駅前のラーメン屋に行くと,カウンターだけの小さなお店から人が溢れて,歩道にまで列ができていた。


インターネットの食べ物サイトで評判がよかった。全くもってネットの情報も功罪相半ばである。どんなに美味しかろうと,この列は異常である。


列に並んでまでラーメンを食べる趣味はない。

観光用商業施設の中に出店している鮮魚店でなおみが面白いものを見つけた。


パックに詰まったムラサキウニである。地物の生ウニが驚くほどの安値でぽんと置いてある。

「今,食べるのかね…」

と店主が醤油とわさびをサービスしてくれた。


ライスと汁はコンビニで仕入れた。


波音の聞こえるオーシャンビューのロケーション。


じゃーん♪

こんなにたくさんお店で食べたらいったいいくらするだろう。


ね♪

ラップに包まれたホントに特別サービスっぽいわさびでしょ。


こいつは旨い。


タローもごはん。


食後の歯磨きぐりぐり。


上島に渡った。海が明るい。

この日御輿来海岸は日の入りと干潮が重なる絶好の撮影チャンス日。年に何回もない。ボクは迷いに迷ったが思いついたオリジナルの撮影ポイントへの期待が止まらない。


有名撮影地の絶好チャンスを捨ててまで向かうはフェリーから撮る海上の入り日である。海と空が朱色に染まってしまったらどうしましょう(笑)



下島の北側をぐるりと回って苓北に入った。イルカ以外に観光の目玉がないのか,ここも来るごとに看板が大きくなり,今年はとうとうミニチュア付きになっていた。


観光名所としてはビミョウである。


夕日と時間の重なる定期フェリーの最終便まで時間の余裕がある。そんな時間に海を渡っては,今夜も車泊は確実である。せめて苓北の温泉センターで汗を流しに来た。


なおみは湯の中で利発な地元の女の子と知り合っておしゃべりしたことを楽しそうに報告した。

半夏抄「天草の少女

 



湯上がりに春の海風が心地よい。


鬼池まで戻った。前の便にも余裕の時間だったので,車列に誘導されたが,係員に最終便に乗りたいと言うと,不思議そうにしながらも脇に停めるように指示された。


口之津~鬼池のフェリーに乗るのは何度目だろう。ボクはよっぽどこの道を旅するのが好きだ。


船が入港してきた。


タロー,行くよ。


そうか,タローは島原に渡るのは初めてだった。


最終便は乗客も車も少ない。バランスを考えて駐車位置は細かく指示される。


定刻通り,18時30分発鬼池行の最終便が岸を離れた。


そして18時37分,東経130度1分,春分から12日目の夕日が遥か野母崎の先端に落ちてゆく。


残念ながら,上空の雲がなくなって空は焼けない。想定内である。こんなときのことも考えてある。

はーい♪モデルさん,お願いしまーす(笑)



タローは車の中で寝ている。数年前,南端の牛深から長島に渡ったときは甲板でみんなに可愛がられた。今は車で留守番の方がいいらしい。だが旅する好奇心はまだ失っていない。さすがボクの子である。


珍しく文庫本を読むのではなく,スマホを操作している。港で撮ったタローの写真を母や義母に送っているに違いない。


航行時間は短い。


島原半島は灯ともし頃。口之津港が見えてきた。


初めてこのフェリーに乗ったのは26年前,諫早湾の干拓に反対するバケツリレーに参加しようとした夏だった。今はもうその干潟はない。


ラッキー♪港の近くのお弁当屋さんがまだ開いていた。
「あたしのり弁」
オレ,玉子丼。…阿蘇の地鶏に敗れた顎がまだ回復していない。


バッテリーから電源を取ってPCを起ち上げ,デジカメのデータをポータブルのHDに書き出す。それからタローの散歩がてら星空でも撮りに出よう。

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