雹が降りました
- 2023/04/16 15:42
Our days
2023年04月16日の記事は以下のとおりです。
4月15日
タローを喪ったとき,ひときわ明るい色の花が送られてきた。多摩センター時代の教え子A奈からである。彼女らしい色合いにボクたちは泣きながら癒された。花といっしょに「虹の橋」の絵本もくれた。それから毎年命日には大きな花かごを送ってくる。3年目にボクらから「今年でお終まいにして」と頼むと4年目からは手紙やメッセージが届くようになった。
彼女は中学生のときからアイドルのように可愛らしかった。声はアニメ声だった。教室を江東区に移転開校したときは,チラシ配りに駆けつけてくれた。暫くして教室で事務のアルバイトをするようになった。大学をはさんで江東区から多摩センターまでの通勤時間は2時間近かった。そのバイト料をすべてつぎ込んで教室の英会話クラスのニューヨーク旅行に参加した。
結婚式にもボクたちを招待してくれた。花嫁はおとぎの国のお姫様のように美しかった。ボクは乾杯の音頭という生涯一度の大役を任された。
赤ちゃんが生まれたときにはまた2時間かけて教室まで報告に来てくれた。
「八ヶ岳に行く前に」と,調布でA奈とお昼を一緒にした。
「先生たちちっとも変っていない。」
そう言うA奈こそおとぎの国のお姫様のままだった。
薄々は感じていたが,彼女の結婚生活が不調に終わったことを初めて聞いた。なぜこんな子に試練を受けさせる必要があるのだ。たぶん彼女は美の女神の嫉妬を買った。A奈がタローを喪ったボクたちを慮って花や手紙を送ってくれていた日々は彼女自身にとっても辛い日々だったことを思うと鼻の奥がつんとなった。でもそういうのはA奈のキャラに合わないので,ボクらは笑顔のまま,山での再会を誓って別れた。彼女の息子は今年中学校に入ったそうだ。ボクたちはいつか彼の役に立てるような人間であり続けようと思う。
4月14日
師匠は何週間も前から皿を素焼きして準備してくれる。
前日には使いそうな絵具を全部お湯で緩めておいてくれた。
筆もパレットも台もセッティングし,バイオリン協奏曲のCDをかけて,広い工房を明け渡してくれる。
だからボクはどうしても結果を出したい。
これがこのままの色合いで焼きあがるとは限らない。そこが絵付けの難しいところで面白いところでもある。
作業が終わってから近くの量販店でプリンターを買ってきてセッティングした。
師匠のPCは家のネットワーク上にはなく,専用の回線を直結しているから,プリンターもUSBで接続する必要がある。
暮れに買ったデジカメはまだ画像をPCに取り込む作業ができないでいる。
プリンターやデジカメの使い方を丁寧に説明するがマウスのタッチが思い通りにできなくなっている。それが精神的にも辛そうだ。
ワードやエクセルのバージョンは10年以上前のもの,フォトショップは15年を超えているが新しいインターフェースに対応できないので変えられない。
師匠はとても不安そうだった。ボクが東京を去って,もっとも困るのはたぶん師匠だ。
師匠がブログを続ける限り,たぶんボクは定期的に東京に来なくてはならない。
帰り際,部屋のゴミ箱にゴルフのアイアンが1本差さっているのを見つけた。
「師匠,これ何するんですか。」
「泥棒が来たらこれで戦うんだよ。1階で食い止めて,家内のいるところには行かせない。」
今の師匠のデジタル的不自由はそのまま20年後のボクの姿である。ボクも今のうちにボクを見つけておかなければならない。
4月13日
編集部から初校というファイルが送られてきて,面談打ち合わせの日程が決まった。
初校…初?
…あ,これからなんですね(;^_^A
自転車はもうしらべ荘に置いて来たので,なおみに送ってもらって帰りはひとりで電車という大冒険。
編集長と担当者お二方が同席の会議,作者のしのざきさんはZOOMで参加されていた。
絵の修正箇所はたいした数ではなかったが,文は,毎回編集長の気分が変わるのでたいへんそうだった。
続いて「表1,表4,見返し1,2,見返し3,4,扉」の打ち合わせに入ります。
え?
つまり表紙,裏表紙,その裏側,中の扉の絵など。
なるほど,言われてみれば当たり前だが,まだ7枚も絵を描く必要があるのだ。
今度は家の引っ越しと締め切りがもろにかぶる(;^_^A
絵本をひとつ作るというのはたいへんなことである。
会議は11時から13時までまったく休みなく続いて終わった。
JR中央線で新宿まで来るとさすがに腹ペコになってしまったので,地下街を根性で歩きイマサのカレーを食べた。
物心ついた頃からの老舗。食べ治めかもしれない。